研究課題
低温環境のためDNAが極めて高度に保存されている南極を対象とし,アイスコアや大型動物遺体などの古代試料由来の古代DNAを解析した.南極ドームふじアイスコアについては4試料からDNAを分析した.クリーンルーム内にてアイスコア融解装置を用いて氷試料内部のみを無菌的に採取しDNAを抽出した.構築した手法を用いてゲノムDNAライブラリーの作成,次世代シーケンサーによるゲノム配列の取得,およびゲノム情報解析により微生物解析を行った.また,南極域の動物の集団動態の最終氷期以降の環境変動による影響を解明するため,環境変動の影響を受けやすい食物連鎖の頂点を占める大型肉食動物のゲノム解析を行った.昨年度に続き,昭和基地周辺のスカルブスネスとラングホブデで採取したミイラ化したアザラシ遺体,および極地研の標本室に保管されていたマクマード基地周辺で採取されたミイラ化したアザラシ遺体を用いて古代DNA解析のバイオインフォマティクス解析などを進めた. 8個体のゲノムデータのうち,read depth ≥ 10のサイトを対象に解析を行い、参照配列と比較して6,758,086のSNPが得られた.SNPの情報に基づきProbabilistic PCA法により個体間の関係を推定すると地理的に離れたマクマードの個体は昭和基地周辺から採取された個体群に内包された.このことは,ウェッデルアザラシは南極大陸沿岸部全域に分布しているが,その遺伝的構造は非常に弱く,地理的な分化は見られないことを示唆している.その一方で,ゲノム全域で10万塩基対ごとに集団動態や淘汰の指標となるTajima’s Dを推定したところ正の値に大きく傾き、ウェッデルアザラシはかつては強い分集団構造を維持していたことが示唆された.本研究の結果から,ウェッデルアザラシは遺伝的分化と集団間の交雑という複雑な集団動態史を持つことが推測された.
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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