研究課題/領域番号 |
18H05253
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 幸生 東北大学, 国際放射光イノベーション・スマート研究センター, 教授 (00415217)
|
研究分担者 |
石黒 志 東北大学, 国際放射光イノベーション・スマート研究センター, 助教 (20752455)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-11 – 2023-03-31
|
キーワード | 放射光 / タイコグラフィ / XAFS / 機能性材料 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、以下の4つの項目を中心に実施した。 ①位相モジュレータの製作:位相モジュレータとして用いるランダムホールアレイの最適なホールサイズと分布を計算機シミュレーションにより決定した。ランダムホールアレイは、窒化ケイ素膜上にPtを成膜し、集束イオンビーム加工を施すことによって作製し、走査型電子顕微鏡によってその構造を評価した。 ②試料加熱機構を備えたその場タイコグラフィ計測システムの開発:窒化ケイ素膜上にPt細線パターンをマスク蒸着により作製し、Pt細線パターンへの電流印可により窒化ケイ素膜上の試料を局所的に加熱するシステムを開発した。リハーサルシステムを用いて、加熱システムの評価実験を行った結果、窒化ケイ素膜上の数百マイクロメートルの領域を630Kまで昇温可能であることが判明した。 ③タイコグラフィによる実用機能性材料の観察:半田合金粒子、タイヤゴム、蓄電池正極材料のタイコグラフィ測定をSPring-8にて行った。半田合金粒子はナノスケールで共晶組織の変化する様子、タイヤゴムはシリカ粒子が凝集する様子、蓄電正極材料は微細構造と化学状態が観察された。蓄電正極材料については、観察像に対してデータマイニング等の解析を施すことにより、組成と化学状態の不均一性に関する情報を抽出することに成功した。 ④その場観察用の試料セルの設計および製作:嫌気雰囲気での測定に用いる試料セルを設計し、集束イオンビーム加工装置を用いて試料保持のための窒化ケイ素膜の加工を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた計画を順調に進めることができた。試料加熱機構を備えたその場タイコグラフィ計測システムの開発し、合金粒子の融解する様子をナノスケールで可視化することに成功した。また、当初の計画を前倒しして、嫌気雰囲気での測定に用いる試料セルを設計し、集束イオンビーム加工装置を用いて試料保持のための窒化ケイ素膜の加工を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の予定として、①テンダーX線領域でのタイコグラフィ測定システムの開発、②X線タイコグラフィによる様々な実用機能性材料の観察ならびに構造-機能相関解析を行う。①に関して、次世代放射光施設におけるタイコグラフィ測定を見据え、テンダーX線領域のタイコグラフィ計測システムの開発を行う。具体的には、ピンホールとフレネルゾーンプレートによる縮小結像照明光学系をSPring-8 BL27SUにて構築する。試料としてタンタルテストチャートを用いた測定を行い、50ナノメートル以下の空間分解能での像再生を目指す。②に関して、ゴム材料、硫黄高分子材料、蓄電池用正極活物質のタイコグラフィ測定をSPring-8にて行う。ゴム材料については、令和元年度に開発した試料加熱システムを用いて、加熱しながらその場タイコグラフィ測定を行うことでゴム中の粒子が凝集する過程を観察する。硫黄高分子材料ならびに蓄電池用正極活物質については、入射X線エネルギーを特定元素の吸収端に設定し、タイコグラフィXAFS計測を行うことで、粒子のナノ構造と化学状態の可視化を行う。そして、得られた再構成像に対してデータマイニングによる解析を施すことにより、構造-機能相関に関する情報を抽出する。
|