研究課題
本研究は、氷床で最も保存の良いグリーンランド南東ドーム地域で250m長のアイスコアを掘削し、世界で最も確度の高い過去200年間のエアロゾルのデータベースを構築し、その変遷要因によるエアロゾルと気温の関係解明を目的とする。令和5年度の成果は北極グリーンランドの頂上のひとつ(SE-Dome)で掘削された250m長のアイスコアを用いて、産業革命前から現在にかけての夏季積雪融解量が北極域の温暖化に伴い増加したことを解明したこと、アイスコア中のI-129を人新世のゴールデンスパイクの優れた候補として提案したことである。2021年に掘削したグリーンランド氷床南東部アイスコアの高精度年代スケールを構築し、産業革命前から現在にかけての夏季積雪融解量が北極域の温暖化に伴い増加したことを解明した。複数の物理・化学的な解析から、グリーンランド氷床南東部のアイスコアの1799年から2020年にかけての時間スケールを、半年解像度という高精度での確立に成功した。そして確立された年代を元に過去221年の降水量と夏季融解層の厚さを復元し、グリーンランド南東部では、融解層の厚さは北極域の温暖化に伴い19世紀から21世紀にかけて増加していることが明らかにした。アイスコアを加速器質量分析を用いて分析し、大気圏核実験により生成したヨウ素129(I-129)のピークが明確に記録されていることを初めて見出した。また、I-129のピークは人類の活動が地球環境に不可逆な影響を与え始めた新しい地質年代とされる「人新世」を示すゴールデンスパイクの有力な候補を提唱した。アイスコアや極域という枠を超え、地球上で利用可能な人新世のタイムマーカーを提示したことは、今後の第四紀学、考古学、気候モデルによる歴史実験などさまざまな研究分野への波及効果が大きいといえる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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