本研究では、絶え間ない感覚入力の中で、どのように知覚意識が生成・消失を繰り返し、時間変遷するのかというクロノメトリーについて明らかにする。そのために、初年度は、その知覚意識の状態遷移プロセスを、超短期記憶を介して評価できる新たなパラダイムを、ヒトと動物の行動実験で検証した。ヒトの心理実験では、標的刺激と手がかり刺激の呈示時間差が短くなるにつれて、標的の検出成績が高くなることを確認し、初年度中旬以降には、複数の実験固体に対し、類似の操作を行い、検出成績が変化するデータを断片的に得ることができた。これらの操作によって、検出成績に変化が認められないのであれば、見落としが生じる原因は視覚情報自体の破綻にある可能性が高いが、特定の時間窓では、視覚情報を拾い上げることができる状態が一定量存在していることが、双方の結果から示唆され、パラダイムの有用性を確かめることができた。次年度は、感覚情報が、超短期記憶を介して、知覚意識に変換されるときに、脳の階層性の中で、どのように情報が処理されるのかを、神経生理学的手法を用いて、明らかにするために、課題遂行中の神経活動記録を計画した。次年度初旬に実施した予備検証の結果、記録手法および使用予定であった記録電極自体に技術的問題点が明らかとなり、それらを解決するために、学内外の機関と連携し、記録チャンバーの設計をはじめとした機器開発の期間をはさんだ。現在までに、一定の打開策が得られており、これまでに確立した行動実験に計測技術をあわせ、最終年度に、予定している脳部位から神経活動を記録していく。
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