研究課題/領域番号 |
18J14458
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
加藤 大祐 三重大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | アシドーシス / 癌進展 / 上皮間葉移行 / 乳癌 |
研究実績の概要 |
癌組織がアシドーシスであることは古くから知られており、癌進展との関わりが示唆されていたが、そのメカニムズムについては不明な点が多かった。今年度は酸性刺激が癌細胞にどのような影響を与えるかin vitroで検討を行った。 低pH (6.4) 下で培養したMCF-7 (乳癌細胞株) は細胞同士がばらばらになり、上皮間葉移行 (EMT) 様の形態を持つようになった。蛍光染色では細胞間のE-カドヘリンやβ-カテニンが消失していたものの、ウェスタンブロッティングではそれらのタンパク発現量に変化は認めなかった。さらにEMTに関与するslugの発現増加は認められたが、EMTマーカーであるVimentinの増加は見られず、この変化は不完全型のEMTであると考えられた。このEMT様変化のシグナル経路について探索を行うと、低pH刺激後にMCF-7細胞のFAK/Srcのリン酸化レベルが上昇することを見出し、Src阻害剤 (PP2) が低pHで誘導されるEMT様変化を完全に抑制することが分かった。p38 MAPKのリン酸化レベルも増加したが、p38 MAPK阻害剤 (SB203580) を用いてもEMT様変化は抑制できず、FAK/SRCが重要なシグナルであることが分かった。さらにFAK/SRCの下流にあり、癌浸潤などに関与するCortactinのリン酸化レベルが増加することもわかった。低pH下では癌細胞の浸潤能や細胞外マトリクス分解能が亢進することも分かった。 今年度は低pH下が癌細胞に及ぼす影響をin vitroで検討し、低pHは癌細胞のEMT様変化を誘導し浸潤能などを亢進させることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低pH下における乳癌細胞の変化を検討した。in vitroでの実験系については、それほど難しい点もなくある程度の成果が出せたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在はマウス担ガンモデルを用いて酸性環境と癌進展の関わりを検討している。具体的には通常条件と低pH下で培養したマウス乳癌細胞 (4T1) をマウス尻静脈から投与し、肺転移巣の評価を行っている。また実際の乳癌組織検体を用いて、これまでに検出できた分子の発現等を乳癌組織で評価し、さらに可能であれば予後などについても検討を行いたい。
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