研究課題/領域番号 |
18J40231
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
米田(中川) 真弓 奈良女子大学, 文学部, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 天野山金剛寺 / 無名仏教摘句抄 / 願文 / 摘句 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、鎌倉時代における願文作品とその製作に関する状況について明らかにするところにある。本年度は、説話文学会4月例会のシンポジウムにて、【発表1】「中世金剛寺僧が書写した摘句集―金剛寺蔵「無名仏教摘句抄」の性格」と題した口頭発表をおこなった(2018年、大阪市立大学)。 天野山金剛寺所蔵の聖教類にどのような典籍が存在しているのかについては、長年にわたる悉皆調査の進展により、その全貌が次第に明らかにされてきた。しかし、現在の金剛寺に存在する聖教類が、どこからやってきたものなのか、またどの時点から存在するものなのかをめぐっては、未だ検討する余地が残されている。近年の研究によって、蔵書の移動に関するネットワークが知られるようになってきているが、金剛寺においてそれを確定する材料はさほど多いとは言えず、内部徴証によって今後の研究が期待されるところでもある。その中で、金剛寺所蔵〈無名仏教摘句抄〉は、書写者が金剛寺僧であることが明らかな希少な例である。 〈無名仏教摘句抄〉は、経典や願文・表白、伝や讃など、仏教関係の要句を類聚した摘句集であり、源円によって宝治元年(1247)5月に書写されたことが知られる。金剛寺一切経にはこの源円が書写したと見られる経典が存在しており、その奥書内容から源円が金剛寺の人物であったことが確定できる。説話文学会における口頭発表では、〈無名仏教摘句抄〉の注記のこと、『宗鏡録』や『法華経顕応録』の利用が確認されること、本書が引用する「十六羅漢讃」から知られることなどを考察した。以上の内容についてはすでに成稿化しており、『説話文学研究』54(2019年)に掲載予定である(【論文3】)。 また、倉敷市・日差山寶泉寺およびその所蔵文献について、第2回日本宗教文献調査学合同研究集会にてポスターを提出した(2018年、名古屋大学【発表2】)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天野山金剛寺蔵〈無名仏教摘句抄〉について、口頭発表と成稿化をおこなった(論文は次年度掲載予定)。その中で明らかになった金剛寺僧の修学活動や他宗との交流研鑽、文献・書物に対する知識や書写活動などの内容は、本研究における次年度以降への課題にもつながるものと考える。 また、報告者は本年度で終了する別の科研(若手研究(B))があり、本科研とは研究成果を別にしているが、その内容を一部引継ぎながら次年度の本研究課題をおこなえるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、鎌倉時代における願文製作や書写活動について調査や考察を進めてゆく。 また、報告者は、天野山金剛寺における調査(科学研究費補助金・基盤研究(B)「金剛寺聖教・文書類を基盤とした社寺ネットワークの解明とその蔵書史的研究J、研究代表者:海野圭介氏・国文学研究資料館)に研究協力者として参加しており、次年度以降の新たな科研においても協力して調査をおこなう予定である。
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