研究課題/領域番号 |
18K00011
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
田中 伸司 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (50207099)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プラトン / 『国家』 / 徳倫理学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、プラトン『国家』においてイデア論を徳倫理学の枠組みの中に位置づけ、アリストテレス由来のそれとは異なった徳倫理学の可能性を示すことである。具体的には、次の2点の研究課題に取り組んでいる。 課題①イデア論を徳倫理学に位置づける 課題②倫理的エゴイズムを肯定する正義論を提出する 2018年度においては、『国家』の掉尾を飾る「エルのミュートス」の研究を進めるとともに、静岡における哲学対話の実践に係って講演を行った(「アカデメイアとリュケイオンの学園―哲学的探究の共同体を支えた理念とマネジメント」2018.11.10)。前者については連携した研究者たちとの研究会で検討を行い(2018.12.28)、対話篇全体に係る解釈の枠組みについて一定の見通しを得た。「エルのミュートス」のみを取り出せば、「人生の選択・老年のあり方と正義」がテーマであるが、直前の第10巻の詩人批判との連絡を考慮すれば(拙稿「プラトン『国家』第10巻においてなぜ詩人の追放が語られるのか」『ギリシャ哲学セミナー論集』vol.15, 2018参照)、魂と国家の制作論として中心巻の3つの比ゆを読み解くことへとつながり、課題①の達成がみえることになる。他方、後者については、プラトンの哲学を現代日本の対話実践において振り返ることで、課題②で予想されるエゴイズム批判にどのように耐えうるかの試みとなった。課題②に関しては、「エルのミュートス」に関する研究の後に、本格的に取り組むこととなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の発表が遅れているように見えるが、これは2019年7月の国際プラトン学会(フランス・パリ)等でのプラトン研究者による批判を受けることが論文の完成度という点で極めて有益であろうと判断したことによる。また学会からの依頼によるソクラテス研究関連の海外論文集の書評においても、本研究に大きく寄与する知見が得られ、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な方針は2018年度と変わらないが、次年度は7月にパリで開催される国際プラトン学会に参加し、本研究の企図についてプラトン研究者からの批判を仰ぎたいと考えている。課題①「イデア論を徳倫理学に位置づける」はこの成果を元に、『国家』中心巻の分析へと進む予定である。また、2019年度においては、第10巻に関する成果とソクラテス研究関連の知見をあわせ、第2巻グラウコンの挑戦の分析へと進み、課題②「倫理的エゴイズムを肯定する正義論を提出する」ことについて一定の進展を得る見込である。 研究計画の変更や研究を遂行するうえで問題となる課題はいまのところない。
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