本研究においては、フランス近現代思想史における「自己愛」概念の位相を明らかにすることを目指した。フランス思想においては、パスカルやマルブランシュ以降、様々な「自己愛」の概念があるが、これは特に、20世紀前半になって新たに脚光をあびたと言える。本研究はこうした状況の中、特に、ルイ・ラヴェルが「自己愛」に厳しい批判を向けつつ同時にその「善用」の方向性を示したこと、ジャンケレヴィッチが「自己愛」に対してこれを徹底的に批判し新たな倫理の方向性を示したことを明らかにした。 また、ミシェル・アンリについても、「自己」にこだわるアンリの思想のうちにこそ、逆に「自己愛」を乗り越える契機があることを論じた。
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