研究課題
基盤研究(C)
本研究は、日本カトリック教会が日中戦争開始時に戦争協力の姿勢を明確に示した背景として、まず、19世紀後半にフランス等で登場した戦争に霊的な益があるとする「戦争の神学」の影響があったことを明らかにした。また、日本政府が満州事変以降、「防共」をキーワードとしたプロパガンダ、外交政策を展開したことにより、当時、軍部や日本社会から攻撃されていた日本の教会は、反共産主義を掲げているカトリック教会が日本政府に協力し認められる機会であるとみなし、日本の中国侵略を「防共」の活動として支持した。
日本カトリック教会史
20世紀前半の日本カトリック教会の戦争協力の実態に関する先行研究が殆ど無い中で、教会の戦争観や日中戦争観を明らかにし得た学術的意義は大きい。また、日本カトリック教会の戦争観や日中戦争に対する協力活動を、世界的なカトリック教会の動向の中で位置づけ、一国史観の枠を超え得た点にも重要な意義があると思う。そして、新たな戦前などと言われる現代において、教会がどのように国家の戦争の論理に同調し、自ら従って行ったかという「内なる動員」の一端を明らかにしたことに、社会的意義があると信じる。