研究課題
最終年度は、論文「与謝蕪村の英一蝶評価――上方における一蝶画評価の様相」を執筆した。本研究では、俳諧文化において高く評価されていたと見なせる画家の内、特に重要な画家として、英一蝶の活動と歿後の評価について検証を重ねてきた。同論文はその締め括りとして、一蝶歿後の俳諧文化における評価について、江戸・関東、上方、伊勢の事例をまとめ、それに18世紀の主要俳人兼画家である与謝蕪村による一蝶画評価についての検討を加えて総括したものである。同論文では、蕪村が江戸俳壇との結び付きに基づき、いわば江戸俳人の代理的な存在として、18世紀後半の上方における一蝶画の俳諧的鑑賞を広め支える役割を果たしていたことを提示した。これにより、上方における一蝶評価について、江戸俳壇との関わりが深い俳人達によって担われていたことを具体的に示すことができた。研究期間全体を通じて実施した研究により、一蝶や尾形光琳などの画家が、18世紀以降の俳諧文化において高い評価を得ていたことがわかった。一蝶の弟子・英一蜂による一蝶の画譜『画本図編』の出版、及び蕪村の活動が、上方における一蝶評価・受容に重要な役割を果たしたことを示し、江戸における一蝶評価の検証と併せて、俳諧文化における一蝶・一蝶画観と評価の様相の総体を解明した。俳諧文化の評価体系に基づき、一蝶画が時代と場所を隔てて白隠慧鶴や曾我蕭白の絵画に利用されたことも明らかにした。研究の中で、一蝶と光琳の関わり、一蝶《涅槃図》の注文主、蕭白の若年の作画活動についての資料なども新たに指摘した。江戸時代の俳諧文化における画家・絵画の評価体系を明らかにし、それが江戸時代絵画の主要な部分に大きな影響を与えたことを指摘することで、江戸時代絵画研究にとっての俳諧文化という視座の重要性を示した。特に一蝶・一蝶画の受容史研究、英一蜂、白隠慧鶴、曾我蕭白らの画家研究に資する所が大きい。
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実践女子大学 美学美術史学
巻: 38 ページ: 61~74
10.34388/0002000074