研究課題/領域番号 |
18K00197
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研究機関 | 大阪芸術大学 |
研究代表者 |
河田 昌之 大阪芸術大学, 芸術学部, 教授 (20712061)
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研究分担者 |
知念 理 一般財団法人大阪市文化財協会, 大阪市立美術館, 主任学芸員 (80726969)
松尾 芳樹 京都市立芸術大学, その他部局等, 学芸員 (80728105)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 土佐派 / 光起、光成、光芳、光貞、光時、光孚、光文、光清 / 住吉派 / 如慶、具慶、広守、広尚 / 江戸時代のやまと絵 / 京都御所襖絵、障壁画 / 寛政度、安政度造営 / 海外所蔵土佐派、住吉派作品 |
研究実績の概要 |
当初の計画に従い、海外調査と国内調査を行なった。海外調査は初年度に引き続き、ボストン美術館において土佐光起・光成合作「秋草鶉図」1幅、住吉弘貫筆「仲舒図」1幅ほか、土佐派および住吉派の作品19点の調査を行なった。状態はほぼ良好で、光成や光貞など光起以降の絵師たちの作品は国内にある作品を凌ぐ画格を示しているものもあることが確認できた。ボストン美術館での調査は2年間で43点に上る。 国内調査は、夏季3回(7/18、7/24、8/9)に分けて行なった京都御所の襖絵調査が主たるものである。安政度(飛香舎は寛政度)造営の土佐、住吉派絵師の襖絵を中心に調査作品をリストアップし、宮内庁事務所との事前の打ち合わせを経て、作品の保全状況、夏季の気象状態や施設の公開時間などの条件内で実施した。耐震工事中の参内殿を除き、調査した襖絵等は、飛香舎鳥居障子20面(土佐光貞、光時筆)、小壁10面(土佐光清、光文筆)、皇后御常御殿上段ノ間襖、障壁16面(光清筆)(以上7/18)、御常御殿剣璽ノ間襖・障壁25面(光清筆)、同御寝ノ間襖36面(光文筆)、御三間上段ノ間襖、障壁17面(住吉弘貫筆)、清涼殿母屋唐絵鳥居障子12面(光貞筆)、同御湯殿鳥居障子4面(土佐光武筆)、同御手水ノ間鳥居障子4面(光文筆)、同台盤所鳥居障子10面(光文筆)、同朝餉ノ間鳥居障子3面(光文筆)、6曲1双屏風(以上7/24)、御学問所上段ノ間小襖4面(光清筆)、同菊ノ間小襖4面(光文筆)、清涼殿広廂衝立障子2件、同二ノ間鳥居障子6面(光清筆)、同弘徽殿上御局鳥居障子6面(光清筆)、同萩戸鳥居障子8面(光清筆)、同藤壺上御局鳥居障子8面(光清筆)、同鬼ノ間鳥居障子6面(光文筆)(以上8/9)である。御所というきわめて特別な場所における画風や主題の調査をとおして、土佐派、住吉派の作画意義等を考える上で基礎的な資料を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年3月上旬にイギリス、アイルランドでの作品調査を計画し、受入期間との調整も終えていたが、国内やヨーロッパで急速に拡大しつつあった新型コロナ感染に対する予防処置として、急遽渡航を中止し、調査を延期した。このため、当初予定していた海外における作品調査の一部が実行できなくなり、研究の計画を見直す必要が生じた。それ以外は、おおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、[1]これまで収集した画像や関連データを基にして、報告書出版の準備と執筆を行う。具体的には、5項目の分類(①画題、②形状、③絵師、④関連人物、⑤その他)によって資料を整理し、特徴を明記したデータを盛り込んだ国内、海外所蔵の作品リストなどを内容とした出版部の構成を検討中である。[2]前年度までに調査できなかった作品についても引き調査を続ける予定である。ただし、海外調査については、ウィルス感染予防などから、その方法を見直す必要が生じたことを受けて、イギリス、アイルランドでの調査方法を見直す。調査を予定していた各機関の所蔵品データベースを活用し、作品の概要を把握するなど別の情報収集に切り替える。この場合、実物を熟覧して得られる情報に比べると限界があるが現状はこの方法で対応する。[3]土佐派画人の系図の検討を行う。「倭錦(本朝画事)」を対象にした研究を継続する(担当:研究代表者河田)。 これらをとおして、やまと絵の継承・創造を担った土佐派(土佐派から分派した住吉派や板谷派も含める)の性格、作画体制などの考究を進め、研究目標の達成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた海外調査のうち、分担者(知念理)のアメリカでの調査は夏季に予定通り実施できたが、研究代表者(河田昌之)と分担者(松尾芳樹)による3月上旬予定していたイギリスならびにアイルランドの調査に関しては、調査先の機関の受け入れ調整もできていたが、新型コロナ感染予防の対応として中止した。そのため旅費等に次年度使用額が発生した。 現状からは、海外調査の再会の見込みが明確ではないため、それらの経費を国内調査の旅費や収集した資料整理等の謝金に用途を変更する予定である。
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