研究課題
基盤研究(C)
本研究は、従来の文学・思想研究では取り上げられることが少なかった書簡・雑記資料に焦点を当て、その意義を考察しようとしたものである。具体的には、(1)17世紀後半の長崎の漢学者盧草拙の許に届いた書簡を集めた『盧氏文書』、(2)18世紀前半の儒学者室鳩巣がその弟子に当てた書簡を集めた『兼山麗澤秘策』、(3)18世紀後半の儒学者湯浅常山が友人の井上四明に当てた書簡を集めた『先君子与仲龍書』の三資料について、その翻刻や人名・書名データベースなどを作成・公開するとともに、考察を行った。
日本近世文学
今回取り上げた三点の資料は、いずれも漢文体であったり、候文(そうろうぶん)体であったり、未翻刻であったりして、資料としてはやや取り扱いにくいものであった。ゆえに従来は本格的な調査がなされていないが、その資料性の高さはつとに認識されていた。とくに人名や書名などは、彼らがどのような交友圏におり、どのような書物について関心をもっていたがが具体的に知られる重要な情報である。今回の翻刻や人名・書名データベースの公開は、17~18世紀学芸史の研究に大いに資するところがあると思われる。