本研究は、1860年から現代までのアメリカ文学作品に描かれた「黒人エリート」像を対象とし、その表象の系譜と社会・歴史的背景を詳らかにしたものである。「黒人エリート」とは、その起源においては、奴隷の立場からいち早く解放され、私財をなして政界、学術・教育界、教会等で指導的地位を得たアフリカ系の市民層を指す。この集団を、より顕著な社会的役割を帯びた「第三の人種」と措定して、アメリカ社会の人種問題の複雑性を具体的に詳述し得た点に、本研究の独自性がある。方法面では、1)南北戦争期、2)再建期、3)大移住期、4)第二次大戦期、5)公民権運動期、6) 現代に分け、作品分析と史料調査を並行的に進行した。
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