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2019 年度 実施状況報告書

18世紀イギリス公共圏におけるトラヴェルライティングと感受性に関する歴史的研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K00432
研究機関成城大学

研究代表者

吉田 直希  成城大学, 文芸学部, 教授 (90261396)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードトラヴェルライティング / ジャコバイト / メソディズム / 感受性
研究実績の概要

長い18世紀の転換点に位置する小説『センチメンタル・ジャーニー』を感情の転回という視点から捉え直すため、スターンが世紀前半のテクスト群をいかに〈アダプト〉しているかを旅行者の分類(外交官、商人、観光客等)がもつ政治的意味とともに歴史的に検証した。その際、感受性文学研究には不可欠な熱狂をめぐる議論を当時のメソディズムの流行とその批判を併せて考察した。研究の過程で、説教、パンフレット、書簡でスターンが用いる語りのレトリックは、彼自身が提示する「事実」の虚構性を明らかにするものであることがわかった。 また、国内外における旅行者の移動が意味する経済的諸問題は、18世紀前半の名誉革命体制の確立、強化の歴史と切り離すことができず、長い18世紀におけるイギリスの財政=軍事国家論の詳細な検討が必要であることがわかった。そこで、三十年戦争から七年戦争に至る英仏の政治・経済・軍事的対立をまとめ、ジャコバイトがメソディズムの熱狂とその脅威という点で重なり合うことを確認した。旅行者の分類はまた、貿易、戦争、階級と密接に関係し、さらに人種、国籍、都会/田舎、ジェンダー、セクシュアリティの問題へと広がっていく。そこで、ジョン・ブリュアの消費文化論を軸に、フィールディングの『トム・ジョウンズ』も分析の対象とした。こうして、前年度の研究成果を基に、熱狂をめぐる様々な議論を18世紀の『トム・ジョウンズ』に表象されているジャコバイトによる反乱との関係から整理することが可能となった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

予定していた研究会、海外での研究会、発表がコロナ禍によって中止となったため。

今後の研究の推進方策

異質な他者との接触を近代的主体の「感受性」の変容の歴史と結びつけて検討することにより、様々な空間を横断する「共感」という座標軸を設定することが可能となる。そこで、従来ポストコロニアルな視点からのみ論じられてきた国境移動の問題を異質な他者の視点を含めてより多面的な形で議論していく。具体的には、今年度議論した財政=軍事国家イギリスが目指す消費文化を移民や移動を軸に整理し直す。そこから、グローバルな18世紀研究の方向性を明確化すると同時に今日的意義を再確認することが可能となるだろう。近年のトラヴェルライティング研究の成果を踏まえつつ、「<書くこと>とは異なる領域のテクストとしてホガースらの図像作品を研究対象として組み入れる。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルスによる各種研究会が中止となり、成果報告、検討が叶わなかったため。
次年度に研究成果をオンラインで確認し、できるだけ早い段階で研究会を開催する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 書評 D・エジャトン『戦争国家イギリスー反衰退・非福祉の現代史』2019

    • 著者名/発表者名
      吉田直希
    • 雑誌名

      ヴァージニア・ウルフ研究

      巻: 36 ページ: 167-175

  • [図書] イギリス文学と映画2019

    • 著者名/発表者名
      松本朗、岩田美喜、木下誠、秦邦生
    • 総ページ数
      408 (58-74)
    • 出版者
      三修社
    • ISBN
      9784384059304

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公開日: 2021-01-27  

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