モダニズム文学が消費文化やポピュラーカルチャーといったいわゆる「通俗的」な要素と深い関わりを有していたという見方は、近年になって徐々に増え始めている。他方で、小説の商品化の進行がテクストの形式面にどのような影響を及ぼしていたかについては、これまであまり注目されてこなかった。本研究は、初期モダニズムへと至る小説の語りを、〈群衆〉から〈公衆〉へと遷移する社会的ダイナミズムの中で捉え直すという点において、大きな学術的意義を有している。またインターネットやSNSを通して大衆のあり方が大きく変わりつつある現代社会において、本研究は単なる過去の文化研究に留まらない社会的意義を有している。
|