研究課題
ドイツ語ではじめての新旧約完全ドイツ語訳聖書であり,かつ初めての活版印刷聖書である1466年のメンテリーン聖書の8つの手書き写本(ハイデルベルク写本,ミュンヘン写本(アレマン方言),ベルリン写本(シュヴァーベン方言),バーゼル写本,ニュルンベルク写本,ベルリン写本,ヴォルフェンビュッテル写本,ディリンゲン写本)に関して旧約聖書の創世記を転記・分析。メンテリーン聖書は現代ドイツ語に通じる初期新高ドイツ語単長母音化と初期新高ドイツ語二重母音化を表記しているのに対し,手書き写本はどれも基本的にはそれより古い中世ドイツ語の母音体系を表記していることが明らかになった。ただしニュルンベルク写本のみは例外である。内容的には活版印刷と同じテキストで,言語上,わずかの差違しかないにのに対し,ニュルンベルク写本では,内容的にも大幅な変更が加えられている。ニュルンベルク写本は別として,手書き写本は教義とは関係のない経済的な関心にもとづく複写である。活版印刷は手書き写本に即取って代わったと思われがちであるが,実際にはそうでなく,活版印刷と手書き写本の間で役割分担が形成され,その役割分担は,手書き写本は方言密着,活版印刷はグローバルマーケット向け,ということが言える。そもそもこのような「メディア転換」が何をもたらすかは今後とも詳細に研究される必要がまだあり,たとえば,どのような写本テキストが活版印刷になり,どのような写本テキストが活版印刷にはならなかったのか,活版印刷になったテキストは手書き写本のテキストと何らかの相違があるのか,は詳細に研究される必要がある。また15世紀以降のテキストには手書き写本であれ,活版印刷であれイラストが多く使用されるようになるが,このようなイラストの役割や意義についても,手書き写本と活版印刷本の間で比較研究される必要がある。
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Festschrift fuer Laura Auteri
巻: 1 ページ: -
Neue Beitraege zur Germanistik
巻: 155 ページ: 215-230
Gemeinsame Herausforderungen Ein aktueller Blick auf den deutsch-japanischen Wissenschaftsaustausch anhand von Beitraegen aus den Ringvorlesungen 2021 und 2022
巻: 1 ページ: 144-153