本研究は、再統一後のベルリンに登場した種々の記念碑、ミュージアム、公共芸術を、それらの1)クロノトポスと、2)社会・政治的文脈の観点で分析し、それらが織り成す首都の記憶の景観が、今日のドイツのいかなる社会・政治的アジェンダを反映しているかを調べた。今日のベルリンを特徴づける脱中心的な記憶の景観は、1980年代の市民運動の中から生まれ、再統一後に制度化され恒常的な想起の場となった。その背景には、現在の民主的社会を維持しようとする市民社会のイニシアチブと、冷戦後の新たな国政秩序の中で、「西側の価値と利益を共有する共同体」に自己より深く統合しようとする連邦共和国の記憶政策が収斂したことがある。
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