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2018 年度 実施状況報告書

20世紀初期日本大衆小説の朝鮮文学への影響様相

研究課題

研究課題/領域番号 18K00502
研究機関富山大学

研究代表者

和田 とも美  富山大学, 人文学部, 准教授 (60313582)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード朝鮮 / 韓国 / 近代 / 日本 / 大衆小説
研究実績の概要

本研究は、日本の明治大正期の大衆小説を、明治大正期の国民統合に果たした役割という観点から再検討し、朝鮮半島の文芸作品に与えた影響を明らかにするという点で、従来の研究史にはない観点から検討しようとするものである。既存の研究で指摘されているように、近世朝鮮の物語本から近代文学への架け橋と評価される李人植の小説(血の涙、1906)は、日本の大衆小説家である村井弦斎の『血のなみだ』(1896)を参照した。李人植は、参照した日本の作品を自らの作品のタイトルに入れたことになる。本研究では、これを読者への一つのメッセージとしてとらえ、積極的に関連性を見出すところから出発する。村井弦斎のみならず、1900年を前後する日本の大衆小説群において「血涙」という言葉をめぐって、どのようなイメージが形成されているかを調査した。調査の結果、当該時期の大衆小説では、「血涙」という言葉が作品の題名として多用されていることが明らかになった。その作品群は、日本の小説本はもちろん、外国文学の翻訳作品も含んでいる。「血涙」という言葉が、苦難の道のりを歩む人物の精神的苦しみを表現するのは、漢文に由来する。欧米系の言語では、「血涙」という言葉は、単純に血液交じりの涙であり、精神的苦闘を表現するものではない。翻訳された外国文学の原題にも、「血涙」という単語は含まれていない。にもかかわらず、日本で日本語で翻訳作品として刊行される際に、作品の内容を端的にあらわす題名として「血涙」という言葉をわざわざ使用している作品が複数見出された。これらの作品のテーマは共通している。李人稙の小説(血の涙、1906)は、題名に「血涙」という言葉を使用することによって、「血涙」という題名を付された日本の大衆小説や、日本以外の外国の小説と、そのメッセージを共有したことが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究開始時点には一つに定まっていなかった方向性が定まり、学術論文を作成中にある。

今後の研究の推進方策

李人稙が「血涙」という題名を使用することによって、日本の大衆小説のみならず、日本で翻訳されていた外国の作品とその志を共有していることが明確になったため、題名を共有する複数の作品を包括的に分析することによって、共有されたメッセージについての解釈を学術論文として発表する。

次年度使用額が生じた理由

研究成果発表費を考慮した「その他」の項目を使用しなかった。次年度で必要とされる場合に支出する。

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公開日: 2019-12-27  

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