富山大学附属図書館に所蔵されている朝鮮開化期大衆小説原本コレクションに含まれている資料のうち、作者の詳細が把握されていない小説について調査を行った。涙香作とされている作品は、日本の黒岩涙香による小説の翻訳・翻案であると見られていたが、黒岩涙香の作品との対応関係を調査した結果、現在確認可能な資料の範囲内では、黒岩涙香の作品との対応関係は確認されなかった。 またコロンビア大学所蔵の涙香作品と合わせて考察を行った結果、植民地朝鮮の状況が反映された内容であり、翻訳・翻案と見るよりは、創作として見ることが妥当であるという結論に達した。 さらに前代の朝鮮文学の作品との関連性を確認し、欧米や日本の影響よりは、朝鮮文学史の流れの中に位置づけるべき作品であることを考察した。
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