研究実績の概要 |
本研究は、近代の日本とロシアの少女雑誌を主たる対象として、各地域の文化や〈西洋〉の少女をめぐる文芸メディアといかに侵犯・融合しながら、今日のポップカルチャーの一翼を担う〈少女文化〉というカテゴリーへと至ったのか、その系譜を検証するものである。本年度は、コロナ禍等により遂行できなかった計画を、期間延長することによって巻き返す予定であった。 だが、コロナ禍に加えて、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化による影響下で、ロシア等の海外での調査の実施が困難な状況が続いている。厳しい情勢の中日本で可能な限り研究を進め、スペインの国際学会にて研究成果の一部についてパネル発表を行った(Sonoko Mizobuchi, Damaso Ferreiro Posse, Li Lee, Yuko Matsuyama,“The Changing View of Foreigners in Japanese Literature: Exoticism throughout History”, III International Congress of The AEEAO, 9th June 2023, University of Salamanca.)欧米のアジア研究者らとの間で、世界の文芸メディアに関する情報の共有や意見の交換が実現でき、今後の研究にとって有意義な学会参加となった。 第70回原爆文学研究会ワークショップ(2023年12月10日、広島大学)では、川口隆行(司会)・一谷智子・溝渕園子・李文茹「翻訳がつなぐ経験―マーシャル、セミパラチンスク、広島」の中で、カザフスタンの作家ロラン・セイセンバエフの児童文学作品(露語)を取り上げた。 また、次世代人材育成の観点から、成果の一部について中国の山東科技大学にて「翻訳が拓く新たな文学の可能性」と題するオンライン講演を行い、教育効果の波及にも努めた。
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