研究課題/領域番号 |
18K00521
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
栗林 均 東北大学, 東北アジア研究センター, 名誉教授 (30153381)
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研究分担者 |
山越 康裕 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (70453248)
佐藤 暢治 広島大学, 国際協力研究科, 教授 (90263657)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | モンゴル系諸言語 / モンゴル語 / ダグル語 / 保安語 / 東部ユグル語 / 土族語 / 音声データベース / 音声変化 |
研究実績の概要 |
本研究の対象はモンゴル系諸言語であり、それにはモンゴル語、ダグル語、東部ユグル語、土族語、保安語、東郷語、ブリヤート語、カルムイク語、モゴール語等が含まれる。それらの多くは話者の数が少なく、近い将来に存続が危ぶまれる「危機的言語」とみなされている。本研究では、それらの言語の音声データベースを構築することを第1の目的とし、それに基づいてモンゴル系諸言語の音声変化の過程を研究することを第2の目的としている。 研究計画はモンゴル系諸言語の音声を収集・整理して、研究者が自由に利用できる音声データベースを開発してインターネットで公開することである。研究の2年目にあたる本年度は、初年度に続き各言語の語彙リストの作成と、音声データの収集・整理を行うとともに、発音記号による表記と実際の発音をリンクして利用することができるシステムの開発を進めた。その結果、インターネット上のデータベースで、任意の項目と音声データをリンクさせて検索・表示・音声再生ができるシステムを構築し公開することができた。 具体的には、語彙リストとして「中国少数民族語言簡誌叢書」の「ダグル語」「東部ユグル語」「保安語」「東郷語」「土族語」の附録にある単語を発音記号(IPA)で入力し、それらをテキストのデータベースとしてインターネットで公開した。音声データとしては、モンゴル語、ダグル語、東部ユグル語に関して、中国内蒙古大学の研究協力者の協力のもとに、語彙リストに基づいて母語話者による発音を収録・整理した。それらのデータに基づいて、発音記号と音声データをリンクさせた音声データベースを構築してインターネットで公開した。 これに関連して、研究の代表者と分担者はインターネットにおける言語データベースの利用に関する研究、およびモンゴル系諸言語の言語変化に関連した研究を進め、関連の学会や研究会で研究発表を行い、研究論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.モンゴル系諸言語の語彙リストの作成:「中国少数民族語言簡誌叢書」の附録語彙をもとにして、モンゴル語、ダグル語、東部ユグル語、土族語、保安語、東郷語等、モンゴル系諸言語のそれぞれ、約1,000語からなる語彙リストを発音記号(IPA)で入力し、整理点検する作業を進めた。作業はおおむね順調に進んでいる。 2.モンゴル系諸言語の発音データの収集、整理:今年度は、中国内蒙古大学蒙古学学院の研究協力者の協力により、語彙リストに基づいてモンゴル語(標準音)、ダグル語(ブトハ方言、ハイラル方言)、東部ユグル語の音声データを収録し、発音記号(IPA)の表記を行い、点検を進めた。これらは音声データベースとしてインターネットに公開することができた。他の言語の音声データを準備中である。 3.音声データベースのシステム構築:モンゴル系諸言語の語彙リストとその発音データをリンクさせ、研究者が音声データを自由に利用できるようなデータベースを設計し、開発を進めた。データベースに語彙リストと音声データを登録して、インターネットに公開することができた。 4.研究の発表:データベースのシステム、およびモンゴル系諸言語の言語的な特徴について、口頭研究発表を行い、学術雑誌に論文を発表した。 このように、研究は計画に沿っておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
計画の最終年度となる本年度は、モンゴル系諸言語の語彙リストと音声データの収録・整理を進め、研究2年目に構築し、インターネットに公開した音声データベース・システムにデータを追加して、データベースを完成させることがひとつの目標である。 なお、本研究のフィールドが中国、モンゴル、ロシアであることに関連して、2020年の2月から中国、日本そして全世界に蔓延している新型コロナウイルスの影響により、研究の遂行に多くの制約が生じることが予想される。当初の計画で予定していた海外における現地調査、海外の研究協力者との協力作業、研究会等を行うことは困難と思われるため、研究の中心をモンゴル系諸言語のデータの整理と音声変化の研究に置くこととする。 海外の研究協力者とは、リモートで研究協力を行い、できるだけ多くのモンゴル系諸言語の発音データを整理して、データベースに登録する。構築した音声データベースを利用しながら、モンゴル系の個別の言語の音声変化の研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画に合わせて研究を行うことにより予算を遂行することができたが、謝金による作業の進行状況に応じて残額が生じた。それを、継続して次年度の作業として遂行するために、次年度へ繰り越すこととした。
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