本研究は、中国東南地域の諸方言の言語データを詳細に調査・分析することを通して,近年の認知言語学の成果によって研究が進んでいる事態把握の問題に関して、中国語の特徴を明らかにした。 中国語は客観的事態把握を好む言語であるといわれるが,その傾向は官話と呼ばれる北方方言においてとくに顕著であることが明らかとなった。北方方言では,話し手は事態の外に身を置いて,傍観者ないし観察者の視点から事態を捉える客観的事態把握を好む傾向が見られるのに対して,東南地域の諸方言では,話し手は事態の中に身を置いて,体験者の視点から事態を捉える主観的事態把握を好む傾向が明らかとなった。
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