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2018 年度 実施状況報告書

書簡に見るエリザベス一世の言語的特徴と国民言語としての英語観

研究課題

研究課題/領域番号 18K00675
研究機関四国大学

研究代表者

平 歩  四国大学, 文学部, 講師 (40761200)

研究分担者 向井 剛 (向井毅)  四国大学, 文学部, 教授 (40136627)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードイタリック体 / Belmain hand / シーモア事件 / ワイアットの乱 / メアリー一世 / 関係詞 / 宗教改革 / 修道院
研究実績の概要

研究代表者は、エリザベスが幼少期から即位直前までの約10年間に認めた直筆書簡10点について調査を行った。まず、"Elizabeth I: Collected Works" (2000) を参照しながら日本語訳を試みた。そして、9月に渡英し、The British Library や Oxford University、The National Archives において書簡の閲覧および画像データの取得を行った。10代前半の書体は当時の家庭教師たちの筆跡(例えば Belmain hand)を忠実に真似しており、文体は簡潔で丁寧な傾向にあった。その後、エリザベスは2つの事件に巻き込まれ、書簡を護身の武器として認めていく。詳細な状況説明、明快な論理構成を取りながら淡々と、また関係詞やカンマを駆使しながら冗長に身の潔白を述べていく。別の事件でも、身の潔白を訴えるとはいえ感情に訴えるようなことはなく、客観的事実を述べた上で女王メアリー一世に面会の機会を願い出ている。興味深いことに、本文と署名の間には11本の斜線が引かれており、他人によって加筆されることを防ぐ意図があったと推測される。また、文字列に傾きが見られる。10代半ば以降のエリザベスの書体・筆致の特徴は均整のとれたイタリック体と言えるためこれは注目に値する。そして、加筆や修正も他の書簡と比べると多い。命の危機に瀕した感情の揺れが文字に現れていると考えられる。概して、自筆書簡を分析することで得られる情報が多く有益な調査となった。
エリザベスの言語の形成及び特徴の解明には、彼女の読書歴の考慮が重要であるため、研究分担者は幼少期から即位までの間に読んだと思われる書物一覧(とりわけ宗教書関連)の作成を試み、言語分析のための基盤を整えた。また、宗教改革前夜の修道院閉鎖をめぐる社会的状況について調査・発表を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究代表者は当初の計画通り、エリザベスが幼少期から即位するまでの約10年間に認められた書簡について考察を一通り終えることができた。しかし、研究報告までには至らなかったため、今後の課題とする。
研究分担者は研究計画に基づき、幼少期から即位までの間のエリザベスの読書歴(特に宗教書関係)を明らかにすることを企図してリストを作成した。併せて、彼女の言語形成期となる宗教改革前夜の修道院閉鎖をめぐる社会的状況について調査・発表を行っている。
これらのことから、おおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

2019年度は、研究代表者はエリザベスが即位してから晩年までの約45年間に認められた書簡を分析する。例えば、スコットランド女王メアリー一世や息子ジェームズ六世への書簡を扱う。2018年度と同様に、9月に渡英し、The British Library や The National Archives において、直筆書簡の現物を閲覧したり電子データの取得を行う予定である。また、学会や雑誌論文にて研究報告を計画的に行いたいと考えている。
そして、研究分担者はエリザベスの読書歴の再現を行うとともに、特定の宗教書散文と彼女の言語との関連性について考察を加える。

次年度使用額が生じた理由

2018年度の旅費が当初の概算よりも少なくなったため、繰越金は2019年度の旅費に充てる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 宗教改革前夜のサイオン修道院2019

    • 著者名/発表者名
      向井 剛
    • 雑誌名

      キリスト教文学研究

      巻: 第36号 ページ: 1-12

  • [学会発表] エリザベス一世による『詩論』英訳ー訳文の言語的特徴と解題の試み2018

    • 著者名/発表者名
      平 歩
    • 学会等名
      近代英語協会 第35回大会
  • [学会発表] 宗教改革前夜のサイオン修道院2018

    • 著者名/発表者名
      向井 剛
    • 学会等名
      日本キリスト教文学会 第47回全国大会

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公開日: 2019-12-27  

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