研究課題/領域番号 |
18K00679
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
佐藤 尚子 千葉大学, 国際教養学部, 教授 (40251152)
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研究分担者 |
松下 達彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00255259)
橋本 美香 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (70462041)
笹尾 洋介 京都大学, 国際高等教育院, 准教授 (80646860)
田島 ますみ 中央学院大学, 法学部, 教授 (90534488)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 学術共通語彙 / 語彙知識 / オンラインテスト / 文字言語 / 音声言語 |
研究実績の概要 |
本研究では、語彙量と言語運用能力との関係性が高いことに着目し、日本語の語彙量の測定により、日本語運用能力との関係が検証できるオンラインテストの開発を行う。本研究グループが開発した「日本語語彙サイズテスト」「日本語学術共通語彙テスト(JCAWT)」について、文字情報のみのものと音声が使用可能なものとの二つのオンラインテストシステムを構築し、これにより、1) 文字言語と音声言語の語彙知識の比較、特に中国語系学習者と非中国語系学習者の語彙知識の発達の違い、2) 成人の日本語第二言語の語彙知識の発達と、日本語第一言語の語彙知識の発達の違い、3) 上述の語彙知識の違いは、読解力や聴解力とどうかかわっているか、について検証する。 まず、外部業者に依頼せず、オンラインテストシステムの構築を研究グループ内部で行うこととした。クイズ・テスト作成ソフト「THiNQ Maker」を用い、問題の入力を行った。これにナレーション録音を行った音声を入力することで音声でのテストが可能となった。試作版がほぼ完成したことにより、来年度はこれを用い、データ収集を実施する。 また、本研究グループが既に開発した学術共通語彙テストを改善するため、4月に日本人大学生を対象に、8月に韓国人日本語学習者を対象にJCAWT2.2を実施し、問題の精査を行った。 成果の発表としては、8月に日本語教育国際研究大会(ベネチア)で「日本語学術共通語彙の習得―第一言語による違いに着目して―」の題で口頭発表を行った。これは、中国語、中国語朝鮮語バイリンガル、韓国語、非漢字圏の言語の母語話者計229人に学術共通語彙テストを実施して得られたデータを分析したものである。また、「日韓共同理工系学部留学生予備教育における韓国人学習者の日本語学術共通語彙の習得―日本での予備教育の効果の検証」(『国際教養学研究』Vol.3)の題で論文を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、外部業者にオンラインテストシステムの開発を依頼する予定であったが、費用、構築期間、管理面などから検討し、内部でオンラインテストシステムを構築することにした。複数のソフトを検討し、クイズ・テスト作成ソフト「THiNQ Maker」を用いることとした。これにナレーション録音を行った音声を入力することで音声でのテストが可能となった。オンラインテストの試作版がほぼ完成したことにより、来年度はこの試作版を用い、データ収集を実施する。 本科研の最大の目的であるオンラインテストの構築について試作版がほぼ完成し、次年度から試行が可能であること、引き続き、学術共通語彙テストの内容の改善を図るためのデータ収集が実施できたこと、今までの研究成果の発表が国際学会、論文執筆で行えたことなどから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は6月に研究打合せを行い、今年度の研究計画の確認を行う。 オンラインテストシステムの試作版が完成したことから、これを用いて、テストを実施し、その結果に基づいて、オンラインテストシステムの改良を行う。また、引き続き、学術共通語彙テスト(JCAWT)の改良に努めるため、4月から5月にかけて、JCAWT2.4を日本人学生に実施しデータの収集を行う。また、8月に韓国人学習者に対しても実施する。今までの研究成果を発表するため、既に学会で発表した、「第一言語・第二言語としての日本語語彙量と漢字変換力の測定」「日本語学術共通語彙の習得―第一言語による違いに着目して―」「日本語学術共通語彙知識の発達―義務教育と高等教育課程における比較」「学部入学前日本語予備教育における学術共通語彙知識の獲得―国立大学に入学する韓国人学習者を例として―」の論文化を行う。 平成32年度は試行を経て完成したオンラインテストシステムを用い、日本語を母語とする大学生、漢字圏学習者、非漢字圏学習者を対象にデータ収集を行う。オンラインテストシステムを使用して収集したデータを分析し、11月に開催される日本語教育国際研究大会で発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、システムの構築を初年度である平成30年度にすべて行う予定であったが、システムの構築を業者に依頼せず、本研究グループによって構築することにした。そのため、本年度に試行版を構築した際に、当初の計画ほど、経費がかからず、予算を次年度に繰り越すこととした。試行試験を実施したのち、その結果に基づいて、システムの改良を行う必要があると考える。次年度に繰り越した予算はシステムの改良に使用する予定である。 それ以外の経費については適正に使用したと考えられる。
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