12世紀にユーラシア東方で覇を唱えた金国の歴史は、ユーラシア東方史上重要な位置を占めるにもかかわらず、史料の僅少もあって従来は研究が立ち遅れている。本研究は、金国の歴史のなかでは文献史料が比較的豊富な儀礼制度に着目し、もっとも肝要な儀礼である祭天儀礼や祖先祭祀を取り上げて、その儀礼の内容を典籍文献の徹底した読み込みをつうじて実証的に明らかにするとともに、女真の伝統に根ざすものや契丹から影響を受けたものなど北方の狩猟遊牧民の文化に由来する儀礼祭祀と中原王朝から導入した儒教儀礼とが重層する様相を初めて本格的に解明した。
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