近世以降の日本で刀装の素材として高く評価された鮫皮は、主に熱帯・亜熱帯の海に生息するエイ等から採取された輸入品であった。本研究課題では、この独特の交易品である鮫皮について、オランダ東インド会社の未刊行文書をはじめとする一次史料に基づき分析した。従来、日本美術史や日蘭関係史の分野で取り上げられてきた鮫皮に対し、本研究では南アジア史およびアジア海域史の視角から迫り、とくにオランダ東インド会社の重要な鮫皮の調達地であった南アジア南部におけるその取引について、現地の政治権力者や商人層の動静や会社との関係を含めて具体的に明らかにした。
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