研究課題/領域番号 |
18K01022
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平松 英人 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (50755478)
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研究分担者 |
猪刈 由紀 清泉女子大学, 文学部, 非常勤講師 (10773583)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | キリスト教社会福祉史 / 市民社会史 / キリスト教史 |
研究実績の概要 |
2021年9月に開催されたキリスト教史学会大会シンポジウム「近代都市形成期のキリスト教と社会事業」で研究代表者と分担研究者がそれぞれおこなった報告を、シンポジウムでの議論とその後の研究とを踏まえて論文としてまとめる作業を進めた。それらの論文は2023年9月にキリスト教史学会監修:馬渕彰編著『近代都市形成期のキリスト教社会事業:黎明期の苦悩』として教文館より刊行予定である。そこで明らかになったことを要約すると以下の通りである。1.キリスト教社会事業では、貧困は文字通り神学的(聖書的)な意味における「罪」の結果であり、それがカリタス、隣人愛にもとづく社会事業の重要な根拠の一つとなっていた。2.同時にそれは、カリタス、隣人愛の対象となるに値する貧民と値しない貧民を区別する根拠となる危険性をはらむものでもあった。3.キリスト教的規範による社会のみが社会的弊害を克服でき、キリスト者の責任からなされる社会的行為のみが真実の人間性であるとする世界観にもとづくキリスト教社会事業は、近代的福祉国家原理とは必然的に緊張関係にあった。4.一方で、19世紀の都市においては、市民たちは自らが依拠する世界観にもとづく「公共の福利」「公共善」の実現をめざしながら、時には競合し、時には協働しながら、現代の福祉国家へと続く下地を準備していった。 今年度はコロナ禍以降初めてとなる史料調査を、ドイツ・ケルン市にあるケルン市歴史文書館で部分的に実施することができた。ボン大学のマンフレート・グローテン教授、およびハレ大学のマンフレート・ヘットリング教授と面談し、本研究計画で分析対象となっている愛国協会などの市民結社と敬虔派に加えて、メノー派等他のキリスト教各宗派とのネットワークとそれぞれの特徴を丁寧に分析する必要性について助言を受け、今後、本研究課題を発展させていくうえで有益な示唆を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の重要な成果となる論文の2023年度内発表に向けた具体的な準備を進めることができた。また部分的にではあるが、コロナ禍以降初めてとなる海外渡航をともなう史料調査が実施できたことなど、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
主たる成果となる論文発表に加えて、本研究課題の成果を次の研究課題に継承・発展させるため、論文をまとめる中で明らかになった課題を踏まえ、新たに収集した史資料の分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は後半になってようやく海外渡航が可能となったものの、当初は十分な見通しを立てることができず、また、コロナ禍による長期の現地調査中断もあり、試行的、部分的な渡航調査とならざるをえなかった。次年度は状況を見極めながら、本研究課題遂行に必要な史資料の入手と調査を実施する。
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