研究課題/領域番号 |
18K01072
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
高橋 満 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (20726468)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 土器製塩 / 縄文時代 / 土器製作技術 / 白色結核体 |
研究実績の概要 |
1961年に旧武蔵野郷土館が発掘した茨城県広畑貝塚の土器製塩関連遺物の調査を継続した。さらに比較資料として、福島県中才遺跡出土製塩土器の検討を行った。 広畑貝塚資料は、これまで2,3の文献にて当発掘調査の概要が触れられているのみであったが、出土資料の全体を確認し、発掘層単位毎と当時の発掘調査図面(断面図)・調査日誌から把握される層の複雑な堆積状況の整合性を確認する作業を実施し、遺跡の全容と貝塚の形成過程を明らかにすることができた。 遺跡最古の資料は、極少量の縄文時代中期と後期前葉のものであり、遺跡内での活動が活発になるのは後期中葉以降であることがほぼ確定的となった。これは従来の知見と大きく変わらない。中でも本資料は加曽利B2式以降出土遺物量が増大し、晩期中葉まで続く。晩期中葉では遺跡内の各トレンチから広く認められるが、特定の場所に集中する傾向はない。 製塩土器は、層位的な出土状況と伴出する土器型式から、後期後葉から出現することが複数の発掘単位で確認できた。初現期ものから、いくつかの段階を経て土器製作技術と形制を変えながら変化する動向が読み取ることができる。また製塩遺跡では出土例がまれな完形品を確認したことは注目される。製塩工程や残滓に関わる白色結核体は、製塩土器が出土する区域や層の中でも特定の場所から出土している。結核体そのものでは時期比定が困難な部分もあるが、土器型式からは後期後葉から晩期に伴うと考えられる。自然遺物は仮分類作業が概ね終了し、遺跡の立地する内湾環境以外から持ち込まれた産物も一定量存在していることが判明した。 中才遺跡では晩期中葉を中心とする製塩土器の製作技術を検討し、器体を積み上げる粘土紐のサイズに着目して地域における製塩土器の変遷について試論を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス流行の影響により年度末に資料所蔵機関への往来回数と資料整理作業に従事する人員が減少したため。
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今後の研究の推進方策 |
遺跡の中での製塩土器の評価を行うため、いくつかの比較指標を抽出し、製塩土器変遷案の精度をあげる。また土器の量やサイズの検討も実施し製塩活動の実態を浮かび上がらせる。 製塩土器を評価するためのバックデータとしてできる限りの資料提示を行うが、膨大な資料数があるため、遺跡形成過程の中で重要かつ良好な層位資料を、自然遺物や堆積環境にも視点を置きながらいくつか抽出し、遺跡の全体像を反証可能な形で提示していく。必要に応じて3D計測技術を用いて、より客観的なデジタルデータによる資料提示も検討する。製塩土器のサイズを検討するには、土器の復元接合は必須になるが、その過程で一個体における土器の作出技法の際の明らかにし、今後他遺跡で出土する製塩土器破片資料の編年(時期決定)指標の標識化も行う。 結核体については近年の分析事例に即して、その成因を明らかにするための微小貝類や珪藻化石の分析等を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析対象資料が多く、出土資料への出土位置付与作業に比較的時間がかかった。また調査には新たに発掘当時の記録類の照合とデータの付き合わせ作業が加わり、この作業を経てから図化の段階に進む必要があったため、デジタル機器の購入が不急となった。さらに作業実施スケジュールが資料所蔵機関の都合と合わせているため、研究協力者の都合と十分に合わせることができなかったため旅費の支出が少なかった。 資料の分類と把握が一定の段化に達したため、図化資料の抽出に至るまでの作業に、人員を配置して成果を出すため人件費の支出が滞らない様に本年度は作業を進め、なおかつ資料を公表する方法と基準を明確にし3D図化や分析的作業の委託を進める。
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