研究課題/領域番号 |
18K01175
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
福武 慎太郎 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (80439330)
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研究分担者 |
上田 達 摂南大学, 外国語学部, 教授 (60557338)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 東ティモール / コーヒー / スイギュウ / 貨幣 / 市場経済 / 伝統 / 儀礼 |
研究実績の概要 |
これまで東ティモールおよびポルトガルで実施してきた東ティモール山地社会における諸儀礼の慣行、コーヒー栽培の導入と展開、貨幣経済の浸透の歴史的経緯に関する現地調査、および文献資料調査をとりまとめ、東ティモールの山地社会における貨幣の浸透と市場経済化の進展の文化人類学的考察に関する報告を、国際会議でおこなった。 調査研究の成果の概要は以下のとおりである;現在の東ティモール山地社会における諸儀礼の過度な負担の背景に、当該社会における家畜、特にスイギュウの重要性がある。ポルトガル植民地期末期にいたるまで、貨幣経済の浸透は極めて限定的で、伝統経済におけるスイギュウの贈与交換がおこなわれてきた。インドネシア支配において、大規模集会の禁止に伴う諸儀礼の中断により、スイギュウの需要と流通も激減し、それに代わりにコーヒー栽培とともに貨幣が浸透しはじめた。東ティモールの独立後、再び大規模な諸儀礼が復活し、スイギュウの贈与交換も活発化した。ポルトガル植民地期と異なるのは、スイギュウを貨幣で買うようになったことであり、これにより貧困化するコーヒー栽培農民が増加した。 この研究成果の意義は、コーヒー栽培農民の貧困状況について、政府、支援団体、そして当事者もその原因に伝統文化(儀礼)を指摘し、諸儀礼の慣行の抑制を図るべきと考えているが、むしろ貧困の要因はスイギュウの商品化(貨幣による購入)にあることを明らかにした点にある。 以上の報告を裏付けるため、さらなる文献史料調査を継続している。東ティモール現地における補足調査が必要であるが、新型コロナ感染拡大の影響により引き続き海外渡航に制限があるため、次年度以降に実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き、新型コロナ感染拡大の影響をかなり受けている。研究計画の大半が海外渡航による現地調査であるため、実施できなかったために研究計画の遅れが生じている。他方で、文献史料調査に優先的に進めることで、研究成果のとりまとめの最終段階にまで達している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、可能であれば現地調査を実施したいが、できない可能性も依然として高い。したがって、今後も継続して文献資料調査に重点を置き、研究成果のとりまとめを進めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大の影響により、現地調査を実施することができずに予定していた海外渡航費の支出が発生したかった。今年度、状況が改善し、海外出張の許可が下り次第、現地調査を実施する予定である。
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