近年人類学における「動物」論の議論では存在論など観念的な部分に焦点が当てられており、動物が物質的に形を変えるという点にはあまり着目されてこなかったが、本研究では個別に検討されることが多かった動物の物質性について、生きている状態から狩猟されて遺骸となり、肉や皮製品になり使用される過程としてとらえることで、動物と人のインタラクションがどのように生成変化するのかを明らかにし人類学の動物研究に新たな視座をもたらした。また、動物との身体的なかかわりが具体的に人間社会に与える影響を示し、アートや物語を新しい視点から検討することを可能にしたという点で人類学以外の分野にも成果を拡張する可能性があるといえる。
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