本研究課題の目的は、租税法・財政法と他の法制度の協働に加えて、行動経済学の成果を法政 策に導入する「行動洞察」の手法を活用することで,現在世代及び将来世代の双方に過度の負担を課さない財源確保の新たな法的枠組みを探求することにある。 2023年度は、これまでの研究計画を踏まえて、研究計画書に記載した第1段階(行動洞察の最新動向と体系的理解)、第2段階(行動洞察の規範的検討とメタ・ルールの構築)、第3段階(行動洞察による租税法及び財政法の再構築)、第4段階(行動洞察と世代間衡平の統合)を踏まえつつ、研究計画策定時に予期しなかったCOVID-19の世界的拡大とそれに対処するための財政支援とその費用の世代間分配の問題を中心に、2022年度に引き続き追加的な調査・分析を遂行し、これまでの研究及び追加的研究に関する研究成果の公表作業を進めた。 具体的には、神山弘行「世代間衡平と租税法:租税・財政・社会保障」フィナンシャルレビュー152号123-142頁(2023年)において現在世代が将来世代にいかなる義務を負うのかという観点から世代間衡平を考察した。加えて、Covid-19対応の財政措置と財源問題に関連して、租税制度における累進性や公平性の見え方(optics)も重要な要素であるとの知見を踏まえつつ、神山弘行「代替ミニマム税(AMT)に関する一考察」税研39号3巻20-30頁(2023年)、神山弘行「パンデミックにおける財政措置と財源:危機対応の副作用」ジュリスト1591号46-51頁(2023年)、神山弘行「累進的な消費課税の提案と課題:耐久消費財の問題<研究ノート>」トラスト未来フォーラム『金融取引と課税(6)』231-248頁(2024年)を公刊した。
|