研究課題/領域番号 |
18K01280
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研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
福島 涼史 長崎県立大学, 国際社会学部, 准教授 (70581221)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 法の支配 / 法治国(法治主義) / 国際法 / グローバル法 / コントロール / 国際法の履行確保 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、立法、司法、行政などの各国内機関が相互にコントロールを及ぼし合うことにより、従来国際裁判所などを通じて外在的に図られてきた国際法の遵守確保が、国家内在的になされる可能性を示すことである。また、当時にそのような効果を有するコントロールが実施される条件を抽出することも狙いとする。 2018年度は、研究実施計画に従い、まず、後者に関して、ゼロ・サム、すなわち、互いの足の引っ張り合いになりかねない、三権分立上のチェック・アンド・バランスが、いかなる政治状況、規範、意図の下、ポジティブな効果を発揮するコントロールに昇華されるかを探求した。これは、頻繁に憲法分野の学会・研究会に参加し、問題関心をともにする研究者と討議を繰り返すことにより、果たされた。 前者の全体的な見取り図に関しては、国際法学会2017年度研究大会(新潟・9月6日)において、行った「国家機関相互のコントロールがもたらす国際法の貫徹――法治国家の帰結として」という個別報告のフィードバックとして、輪郭を描いた。これは、国際法分野の学会・研究会に参加し、当該報告に対するコメントを聞き、助言を請うことによって補われた。 これらの成果を「国家機関相互のコントロールによる国際法の拡充 : 法治国における合理化要請の対外的効果」(『国際法外交雑誌』、第171巻1号、2018年、80-107頁)として公表した。 その意義は、一つに国際法と国内法を共通の目的の下に理論的に架橋することであり、従来の二つの法体系の衝突を懸念したアプローチに対して画期をなしたといえる。これに加え、合理化(性)という概念の応用可能性を提示することで、法哲学的な議論との接合にもわずかながら道を開いた点も学術的に重要と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外からの招聘教授の来日が延期になったことなどに起因して、それを前提とした研究も連動して遅れることになった。そのために、国内の学会・研究会に参加するなどの地道な研究が主となり、当初の計画に比べて、予算の執行額が低くとどまった。 これは、必ずしも研究自体の遅滞というわけではなく、2018年度中は十全の受け入れ準備を行ったので、2019年度以降は、繰り越しになっている予算を活用して、海外とのやりとりを活発に行う予定である。 当初の想定よりも各種の委員会の開催回数が増加し、また、拘束時間も長くなったが、パソコンを新規に購入して、移動の時間なども無駄なく、研究活動ができるように環境を整えた。2019年度もこの流れを大切にして、効率的に研究を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の見取り図ともいえる論文を公表することができ、これへのコメントなどからも、方向や理論的枠組みについては、有益、堅固なもの意を強くした。その意味で、研究の推進方策自体には大きな変更はない。 大きな課題としては、複雑で含意の多い概念を駆使するために、ややもすれば、難解で、ドイツ公法学に固着的なものとして敬遠されかねない。このように狭いサークルの中のものと誤解されては本研究の意義が十分には発揮されない。 このため、今まで以上に広い分野と様々な関心の人々の中で議論を展開し、研究の素材を獲得すると同時にその普遍性の周知に努めたい。特に、海外の呼応する研究(者)との交流を密に図り、より開かれた研究を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
先述のように、海外からの招聘教授の来日延期などにより、これを前提とした研究の各段階が連動して、次年度にずれ込むことになった。このため、次年度以降の集中的な大型の研究出張を見越して、比較的安価にアクセスが可能な学会、研究会に対しては、学内の個人研究費を利用することでまかなった。ただし、海外とのやりとりに必要な書籍・物品は2018年度中に買いそろえ、次年度以降の準備とした。 研究活動自体が縮小するわけではなく、予算を多く必要とする計画が後回しになっただけであり、申請期間全体(3年間)で使用する額に大きな変更はない。今後は、かなりめまぐるしく活動することになることは予想されても、使用計画・内容自体には差違はない。別言すれば、次年度以降は物品費の割合が下がり、旅費の割合が大幅に上がることが想定される。
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