研究課題/領域番号 |
18K01280
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研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
福島 涼史 長崎県立大学, 国際社会学部, 准教授 (70581221)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 法治国 / 法治主義 / 法の支配 / コントロール / グローバル法 / 国際法 / 国際法と国内法 / 緊急事態 |
研究実績の概要 |
新型コロナウィルス(COVIT-19)対策として、各国政府によってとられた隔離、入国制限、移動の制限の分析・評価という喫緊の課題に、先行する2年間を通じて輪郭の見えてきた理論枠組みを応用することを試みた。 人権制約的で、各種の国際法の要請にそぐわない措置をとったのは狭義の政府(行政府)であった。そして、それらの措置は、しばしば、当該国家の憲法や法律上の根拠なくとられ、また、国内法に触れるものでもあった。このため、それぞれの国内においても、裁判所や議会(立法府)を通じて、政府の措置に歯止めをかけようとする動きが見られ、そのような他の国家機関による抑制に着目した。 注目すべきは、国内における複数機関によるコントロールを期待するかのように、国際連合の事務総長をはじめ、国際機関の責任者も、従来法律の留保といった文脈で語られてきた要件(目的の明確性、地理的・時間的範囲の限定、とられる手段の相応性)を提示していることである。本研究の狙いが外れていないことの例証であるとともに、頻繁に用いられる措置の合理性という概念の精査の必要を示すものである。その一部は、国際法学会ホームページのエキスパートコメント「Covid-19という緊急事態・非常事態」としてすでに一般に発信している。 理論的な取り扱いとは別に、国際機関から各国の国家機関に向けて、合理性が語られ、要請される局面・文脈を実証・検証するちという作業も行い、研究の視野を広げる土台とした。その集約と理論的な意義づけについては相当程度に準備を進め、すでに決定されているフォーラムにおける発表に盛り込むことになっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
すべての申請者に共通していると思われるが、新型コロナウィルス感染症の蔓延のために、引き続き、海外との行き来、やりとりが大幅に制約された。関西、関東で開催予定であった、海外からの講師を招聘しての講演会もほとんどが中止となった。それのみならず、国内の研究者による講演会、研究会、学会も順延どころか中止になった。 幸い、オンラインの研究会・講演会が実施されるようになり、挽回できた部分もあったが、集合的に専門家や研究者がそろう機会が失われたことにより、オンラインでやりとりするにも個別に行わなければならず、遅延は避けられなかった。
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今後の研究の推進方策 |
合理性は第一義的に、目的と手段の連関に関して、すなわち、その目的を定める憲法、法律内在的に語られ、評価されるべきものである。ところが、今回、本研究の上記の対象を検討するにあたり、その事態の突発性(先例がなく、参照可能な過去のデータのないこと)に鑑み、他国の措置・政策との比較ということもこの合理性の傍証として頼るべきものであることが明らかになった。昨年度調査した台湾での実践などがその好例である。感染症の封じこめに成功している国の措置は、法的な意味でも他国のモデルとなりえ、その蓄積はあらたな法的基準の醸成につながる。感染症の大規模拡大という困難な状況によって、くしくも、グローバル法形成の新たな道筋(条件の究明)が可能になったともいえる。 本来であれば、このような観点で国内・国外においてインタビュー調査も行いたいが少なくとも年度の前半は実現可能性が低い。そこで、後半における実施に期待しつつ、前半は、国際機関の報告書の該当部分を吟味するともに、発信されるメッセージの把握に努めたい。同時に、各国のメディアにアクセスし、他の国の措置・政策についてどのような評価が語られているかについても整理したい。本格調査にとっての中間的方策として、オンライン(ビデオ通話等)でのインタビュー・調査などの工夫を図りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
上述のとおり、新型コロナウィルス感染症の蔓延に前後して各種の研究活動、特に旅費を必要とする活動大きな制約が生じ、予算を支出する研究活動が十分に行えなかった。 2021年度後半にこれを集中的に挽回できるように、現段階で、訪問の予約・アレンジメントを綿密に行いたい。クォーター制を利用し、前半は授業等を集中的にこなし、後半に海外における調査が可能になるようにすでに差配している。
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