研究課題/領域番号 |
18K01280
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研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
福島 涼史 長崎県立大学, 国際社会学部, 准教授 (70581221)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 入国管理 / 法治国 / 法の支配 / コントロール / 三権分立 |
研究実績の概要 |
今年度は、国際法と憲法・国内法の交錯領域として、特に、入国管理に関する法に着目し、研究を行った。まず、在留資格更新が恣意的に拒否されたマクリーン事件判決についての近年の論評を精査し、理論的整序を試みた。他方で、新型コロナウィルス感染症に関連する各国際機関のステートメントを吟味し、そこに法治国的原則が表れていることを確認した。その上で、両者を比較・照会することで、いかに日本の入国管理体制が法治国の要請にもとるものであるかを炙り出し、なされるべき補完を特定した。 上の内容を、6月16日の国際人権法学会の第3回(第8回)フォーラム(オンライン)にて発表した。そこでは、「法治」の過少を克服するためには、マクリーン事件判決のいうような、国家の自由な裁量を極小化しなければならないことを再度強調した。そのために、まず、各省庁の準則に至るまで、国際基準を参照しつつ、法の段階化する必要があることを説いた。そのことがとられる措置の合理性を確証するからである。加えて、入国・上陸の局面から始まって外国人の人権を細目化することも有益であるとした。通行、上陸、短期の滞在などのそれぞれのレヴェルを設定することで、裁量余地が縮減されるからである。 これらの提言は、クルーズ船の寄港に対する措置を巡って国際的な批判されされた日本(政府)が、国際基準に則った入国管理行政を行う上で示唆することが多いと考える。 当該研究の全体との関連でいえば、国際基準を持ち出すことで、立法府や司法府が行政府の措置に介入する余地が生まれる素地を、入国管理分野において敷衍的に確認したことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
個人で遂行が可能な文献やデータの精査は計画的に行うことができたものの、すべての研究者に共通していると思われるが、新型コロナウィルス感染症の蔓延のために、引き続き、海外との行き来、やりとりが大幅に制約され、現地調査などを行うことができなかった。国内の研究会はオンラインで実施されることが増え、いくぶんかキャッチアップが可能であったが、海外の研究者とのフォーラムなどは機会が少なく、研究に資する議論を十分に展開できなかった。 その中でも幸い、日本の省庁や自治体職員とはオンラインで、研究会や意見交換会を実施することができ、実務の実態や傾向を把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
まだ余談を許さないものの2022年の夏以降は海外渡航などが可能になるのではと考える。幸い、再延長を認められたので、是非とも当初の計画どおりに各地に出向き、調査を行いたい。分担者として国際法分野と憲法分野それぞれの科研費研究に参画することができるようになったので、この機会を活かし、両研究の内容を当該研究に反映させたい。具体的には現在の国際機関の立場のみならず、歴史的な変遷に視野を広げ、参照すべき国際基準自体の変遷も研究対象としたい。同じく、純粋法学のその後の変化、また、受け止められ方の変容を視野に入れ、最新の純粋法学理論において、コントロールがどのように位置づけられるか、また、どのように機能するかを特定したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の蔓延に前後して各種の研究活動に大きな制約が生じ、予算を支出する研究活動が十分に行えなかった。 2022年度後半にこれを集中的に挽回できるように、現段階で、訪問の予約・アレンジメントを綿密に行いたい。
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