これまで重ねてきた研究の最終年度にあたるため、二方面においての具体化・個別化を図り、当該研究の射程と社会的有用性を例示することとした。 まず、理論面における具体化として、近年の論議の隠れた核心である目的論を国際平面と国内体制との接点として提示し、合わせて国際法学、憲法学における、安易な理論的傾向に対する警鐘とした。すなわち、衡量法学、復仇の同害復讐性、自衛の無限定などのタームで表すことができる理論的傾向は目的論を堅持することで質しえることを示した。これまでの自身の研究を修正するテーゼ・帰結も付随して導出できた。構成的で将来志向的なもの。これらの内容を「法理論上の錨となる目的概念―二元化・一元化潮流に抗して―」という研究報告にまとめた。 ついで、COVID-19期が終わり、今後再注目される国際ツーリズムという分野に関して、コントロール・国内実施のモデルケースを、「宗教ツーリズムにとってのポテンシャル―UNWTO からみる長崎の離島」という報告で扱った。特に、これまでは主に、国内の主体として政府・国会などをターゲットとしてきたが、これを更に自治体のレベルにまで敷衍することを試みた。具体的には、長崎県庁・各市町村の地域振興の法政策を、国際平面から眺め直し、国際的な要請の実施・実現という要素を提示した。すなわち、UNWTOを中心とした国際機関の立場・近年の政策の整理・紹介した上で、宗教ツーリズムというジャンルに注目し、五島などの離島におけるローカルな運用を国際的な観点で再評価できることを論じた。この研究は合わせて、これらの地域が有する広義のキリスト教遺産の利活用を提案するという社会貢献も図った。
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