研究課題/領域番号 |
18K01294
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
寺尾 仁 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (70242386)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 住宅 / マンション / 区分所有 / 居住 / フランス |
研究実績の概要 |
1.研究の前提として、フランスの区分所有の基本法である1965年7月10日法を改正した2018年11月28日の法律、通称エラン法(loi Elan)を分析した。この法律は、区分所有のみならず、借家、都市計画、社会住宅、旅館・ホテルなどにわたる広範な法を改正するものである。区分所有法改正にかかる部分では、共用部分の定義、区分所有者の集会への出席方法・代理出席、管理者の理事会決議の尊重義務、修繕積立金・管理費不払対策などが扱われた。本研究計画と関連の強い事項としては、修繕積立金・管理費の常習的不払者からの徴収手段が強化され、常習的不払者に対して管理組合は期日が到来した修繕積立金・管理費のみならず、期日が未だ到来していない修繕積立金・管理費も請求することができるとした(エラン法第210条、区分所有法第19-2条)。 なお、エラン法による区分所有法改正の多くの部分は委任立法(ordonnance)に委ねられており、18年度中には明らかになっていない。 2.次に、フランスにおける居住者の住生活を支える法制度の中心を成す、賃借人の住居費負担能力を確保するための家賃補助制度(aide a la pierre)の現況を調査した。その結果、①家賃補助制度の骨格自体には過去10年近く大きな改正がないこと、②公法である建設住居法典、私法である借家法と連動して、住宅として非衛生あるいは建物として危険である不適切住居(habitat indigne)と認定された住宅の借家人は、非衛生あるいは危険が除去されるまでは家賃・管理費等の支払義務を免除されるとともに、家賃補助も支給されないとされていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の前提である区分所有法が昨年中に改正されたため、その改正のうち本研究の主題である荒廃区分所有者の住生活の維持・改善と関わりの深い事項を分析した。改正の一部が法律(loi)でなく、今後定められる委任立法に委ねられているため改正の全体像が明らかになっていないことも研究の遅れの1つの理由である。
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今後の研究の推進方策 |
1.区分所有法の2018年改正につき、背景や制定過程を含めて、本研究の主題との関連を分析する。とりわけ、法改正の主要な対象となった修繕積立金・管理費の常習的不払者は、「眠りの商人(marchand de sommeil)」という住宅の貧困ビジネスを営む者であることが多く、マンションの荒廃の主要因の1つと2014年改正時から認識されている。今後はこの点については実態を含めて充分に検討する。 2.昨年度は借家人への家賃補助制度のみに留まった荒廃区分所有の居住者の住生活を支える制度の点検作業を進める。 3.マンションの荒廃とそれからの回復、区分所有者・借家人双方の居住生活の回復の関係につき、具体例を定めて分析を始める。
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次年度使用額が生じた理由 |
区分所有法改正等に追われて、フランスでの調査がマンション居住者の住生活を支える制度の一部に留まってしまった。次年度は制度調査と事例調査をフランスで実施する。
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