研究課題/領域番号 |
18K01294
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
寺尾 仁 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (70242386)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 住宅 / マンション / 区分所有 / 居住 / 住宅管理 / フランス |
研究実績の概要 |
1.住宅の居住者には、所有者と賃借人をはじめとする所有権以外の権利に基づいて居住する者がいる。これは区分所有住宅(マンション)でも同様である。 2.フランス区分所有法では、占有している否かに関わらず区分所有者を、管理業者に対する消費者と位置づけて保護しており、それを強化する傾向は2014年制定のALUR法以降変わっていない。これにより、支払った管理費および修繕積立金を良好な管理のために使うよう管理業者に求め易くなっているだけでなく、他の区分所有者による管理費および修繕積立金の不払いの防止あるいは是正をし易くなった。さらに、区分所有者の団体である管理組合が財務上あるいは意思決定によって運営が困難になった際には、民事法上の専門職が介入して管理組合の機能回復を支援することも明らかにした。 3.賃借人のうち、収入や心身の状況、家族構成等により住宅に困窮している者に対しては、住居・建設法典に基づく応能住宅援助(APL)か、社会保障法典に基づく家族住宅手当・社会住宅手当(AL)のいずれかの家賃補助が支給される可能性がある。これにより、良好な管理に必要な管理費および修繕積立金を賃貸人に支払うことができる。 4.荒廃区分所有建物の改善が施された後の管理費および修繕積立金、あるいは家賃の支払能力がない居住者に対しては、建設・住居法典に基づく社会住宅への転居を求める措置がある。 5.解決がもっとも難しい課題は、1棟の区分所有住宅あるいは住宅を含む1団地の中で利用権原が異なる居住者が、建物の良好な管理に取組むことを支える条件の発見とその促進策の評価である。年1回日本で言えば町内のような範囲で居住者同士の信頼関係を高めるための運動として料理・飲み物を持ち寄る「隣人祭り(fete des voisins)」などの試みは行われているが、住宅管理への影響までは見られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フランスにおける荒廃区分所有住宅の是正・処分制度全体における対人施策のあり方をおおむね把握することができた。したがって、居住者を区分所有者と区分所有権以外の権原によって居住している者に分け、後者の代表として賃借人を挙げて各々を対象とする制度を検討することができた。 さらに、マンションを含めた街区住民・事業者の繋がりを確保するという問題意識に基づく社会運動が広がっていることも確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」で述べた内容を、具体例を挙げながら検討する。資料は2年間の調査である程度収集できているので、その分析を進める。補足調査は、現地調査を予定しているが、新型コロナウイルス感染症によって調査が困難な場合は判例等の分析で置き換える。 なお、研究成果の中間発表の機会として予定していたアジア太平洋住宅研究ネットワーク2020年大会(The Asia-Pacific Network for Housing Research 2020)が2021年に延期されたことにより、これを中間発表ではなく、成果発表の場とすることを検討している。
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