研究実績の概要 |
1.2022年度は、フランス政府が2021年に募集した、居住用区分所有改善のための研究者と実務家の共同社会実装プロジェクト「(Re)ge(ne)rer les copropriete - Connaitre et comprendre les coproprietes, les mobiler pour la ville durable(区分所有の管理(再生):持続可能な都市のために区分所有を知り活用する)」に採択された6件のプロジェクトの目的・内容を調査した。とりわけ「古くからの隣人:トゥールーズとブリュッセルで1970年代に建設された長屋(coproprietes horizontales)の老朽化による社会的および空間的帰結」と「区分所有建物内の居住者のコミュニティの開発」の2件については、研究代表者への聞取りおよび現地調査を行った。 2.研究期間全体を通して明らかにしたことは、フランスでは法制面では居住用区分所有における安定した居住の確保のために、 ①-1管理者・区分所有者の健全な管理の推進の義務化、および①ー2管理費・修繕積立金不払い等の不良区分所有者の抑制・排除の仕組みの拡充を進めたものの、①ー3管理に必要な費用は主に区分所有者の負担増によって調達され、区分所有者への公的助成および賃借人への住居費援助は拡充していない。 これに対し、管理実務面では②ー1居住区分所有者の役割、②-2管理者の役割について新規性のある試みが、パリ圏、地方を問わず着手されている。 残された課題は、安定した区分所有居住のために③-1現行法が定める区分所有者および管理者中心の管理に対して居住者にいかなる地位と役割を与える法改正の方向を示し得るか、③-2そのような法改正の方向から日本の区分所有法改正に有為な教訓を得られるかという点である。
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