本研究では、知的財産権に基づく差止請求権をめぐる諸問題について、主に手続法的観点から研究を行った。著作者の権利(著作権・著作者人格権)に基づく出版前の書籍等に対する差止請求権は、ドイツ法・米国法を対象とする比較法研究を通じて、事前抑制には当たらないとされていることなどを明らかにし、最大判昭和61年6月11日民集40巻4号872頁〔北方ジャーナル事件最判〕の理論的問題を明らかにした。このほか、不作為債務の間接強制決定の要件として、債務者が不作為義務に違反するおそれを、債権者が立証することの要否等の関連問題の検討も行い、差止請求権による知的財産権の実効的保護を図るための理論的基礎を構築した。
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