本研究においては、日本法とフランス法における契約に関する法的規律の比較考察を行い、契約の履行段階において適用される信義誠実の原則(信義則)がどのような役割を果たしてきたかを検討した。具体的には、フランス法における信義則論が、契約の拘束力の原則とどのような関わりをもちながら展開されてきたかを、法理の沿革と現状にかんがみて考察した。以上の成果により、日本法における信義則論の適用領域とその機能を考察するための体系的な視点として、信義則を、契約目的を支持・補強するものと、契約当事者に対して誠実な行為を義務づけるものと二分することが有用であるとの知見が得られた。
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