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2021 年度 実施状況報告書

契約不適合に基づく減額請求規定の活用による消費者保護

研究課題

研究課題/領域番号 18K01382
研究機関山形大学

研究代表者

小笠原 奈菜  山形大学, 人文社会科学部, 教授 (40507612)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード瑕疵担保責任 / 契約不適合 / ドイツ民法 / 消費者保護 / 代金減額 / 情報提供義務 / 説明義務
研究実績の概要

契約交渉過程において不適切な説明がなされ、当事者が望んだ内容とは異なった内容の契約が成立することがある。この際に、不適切な説明を行なった者の説明義務違反が認められたとしても、損害算定のレベルにおいて、説明の相手方(たとえば消費者)が救済されない事案が多数あるという問題がある。ドイツでは、瑕疵担保責任に基づく代金減額請求の規定を類推適用することにより、消費者等の説明の相手方を救済するという手法が取られている。
本研究は、瑕疵担保責任の減額請求規定を類推適用し、損害を賠償することにより説明の相手方を保護するための理論的基盤を提供することを目的とする。改正前民法には瑕疵担保責任に基づく代金減額請求の規定はなかったが、2020年4月に施行された現行民法では、瑕疵担保責任が契約不適合責任に変更され、効果として代金減額請求が規定された。同種の規定をもつドイツの議論を分析し、日本への導入の可否を検討する必要性が高まったといえる。
本年度は、ドイツの学説を調査、検討した。ドイツでは、契約の目的物について不適切な説明がなされた結果、当事者が望まなかった契約が締結された場合の金銭調整として、説明義務違反を根拠として、反対給付の縮減(売買代金の減額など)という金銭調整が行われてきた。具体的な調整額の算定の際に、瑕疵担保責任に基づく減額の規定であるドイツ民法旧472 条の類推適用を用いるべきとする説が主張されている(Canaris,Wandlungen desSchuldvertragsrecht;Tendenzen zu seiner “Materialisierung”,AcP200,273 (2000))。具体的な規定の適用について、Canarisの主張への評価を中心に2001年の債務法現代化後の変遷に関して、学説を調査、検討した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度は、ドイツの学説を調査、検討した。ドイツでは、契約の目的物について不適切な説明がなされた結果、当事者が望まなかった契約が締結された場合の金銭調整として、説明義務違反を根拠として、反対給付の縮減(売買代金の減額など)という金銭調整が行われてきた。具体的な調整額の算定の際に、瑕疵担保責任に基づく減額の規定であるドイツ民法旧472 条の類推適用を用いるべきとする説が主張されている(Canaris,Wandlungen desSchuldvertragsrecht;Tendenzen zu seiner “Materialisierung”,AcP200,273 (2000))。具体的な規定の適用について、Canarisの主張への評価を中心に2001年の債務法現代化後の変遷に関して、学説を調査、検討した。
当初の予定ではドイツの裁判例及び法律相談に関する情報を収集、分析するとしていたが、新型コロナのため、情報収集に支障が出て、当初予定した通りに進めることができなかった。

今後の研究の推進方策

令和4年度は、まず、ドイツの裁判例において、説明義務違反の場合の「損害」として何をとらえているのか及び損害の算定基準を、債務法改正前と改正後ともに調査、検討をする。ドイツでは改正により、契約交渉の際の説明義務違反に基づく損害賠償の根拠となる契約締結上の過失責任が、債務関係に基づく義務違反(ドイツ民法280条)とされるという大きな変化があった。日本においても、契約前の義務と契約上の義務の連続性が見られる部分がある。
さらに、ドイツ法の議論を日本法に取り入れるためには、実務上の問題の異同についても把握する必要があるため、日本法と同様に、裁判例として現れない法律相談に関する情報を収集、分析をする。
最後に、ドイツ法の議論を基に、契約不適合に基づく減額請求規定による消費者保護が日本法において可能か否かを検討し、論文執筆を行なう。論文は『山形
大学法政論叢』、『山形大学紀要(社会科学)』へ投稿する。さらに研究成果が関連分野の研究者において広く共有されるよう、「国際取引法研究会」「東北大学民法研究会」「消費者法判例研究会」にて報告を行う。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナの影響で、ドイツの裁判例及び法律相談の実情に関する情報収集を、当初の予定通り進めることができなったことが次年度利用額が生じた理由である。
本年度に予定していた情報収集等を当初予定していた次年度の研究計画とともに行なうことにより、使用する計画である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 情報提供義務違反の効果としての減額 : ドイツにおける「culpa in contrahendoによる減額」の導入可能性2022

    • 著者名/発表者名
      小笠原奈菜
    • 雑誌名

      山形大学法政論叢

      巻: 75号 ページ: 1~26頁

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 情報提供義務違反の効果としての代金減額2022

    • 著者名/発表者名
      小笠原奈菜
    • 学会等名
      国際取引法研究 会
  • [学会発表] 金融サ―ビス仲介業の利用者保護について2021

    • 著者名/発表者名
      小笠原奈菜
    • 学会等名
      ネットとうほく消 費者被害事例ラボ
  • [図書] 中田裕康先生古稀記念 民法学の継承と展開2022

    • 著者名/発表者名
      岡本裕樹,沖野眞已, 小笠原奈菜、他33 名
    • 総ページ数
      984頁
    • 出版者
      有斐閣
    • ISBN
      978-4-641-13861-2

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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