研究課題/領域番号 |
18K01444
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大串 敦 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (20431348)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ウクライナ / ロシア / 政治体制 |
研究実績の概要 |
本年度も、引き続き新型感染症の影響によって、予定していたフィールドワークの実行が不可能であったため、研究業績のアウトプットが若干停滞した。そのような中で、中東欧研究国際評議会(ICCEES)世界大会のパネルにおいて、ゼレンシキー大統領当選後のウクライナ政治の変化について報告を行った。これまで地方閥を基盤にしていたウクライナ諸政党であるが、ゼレンシキー大統領の当選と直後の議会選挙による与党公僕党の勝利により、指導者のカリスマに依存する体制ができつつあった。しかしその後の地方選挙では、公僕党は敗北し、大都市の市長が立ち上げた各種の地方政党が出来上がった。こうして、地方に根を下ろさず指導者のカリスマに依存する全国政党と大都市に誕生した各種地方政党が対抗する政治的亀裂が生じつつあった。本ペーパーを起点に、フィールドワークを行いウクライナ政治体制論をまとめる予定にしていたが、ロシアによるウクライナ侵攻によって、根本的に書き改める必要が出てきている。 また、現在のウクライナ政治の原点ともいえるソ連解体過程について啓蒙的な二本公刊した。一つはソ連邦の再編の試みをその挫折に焦点を当てたもので、もう一つは政治体制の崩壊により力点を置いたものである。 さらに、本年度終わりに発生したロシアによるウクライナ侵攻に至る経緯をまとめた時事解説を執筆した。ロシアの侵攻はウクライナ政治の在り方を根本的に変容させるとみられる。今後、この問題の研究が必要になると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず申請時には予測していなかった新型感染症の世界的流行によって、予定していたフィールドワークは今年度も実施できなかった。また、年度末に発生したロシアによるウクライナ侵攻(これも当然研究申請時には全く予想していない)によって、フィールドワークはおろか、ウクライナの国内政治の在り方も根本的に変化を余儀なくされた。このような事情から研究の進展に遅延が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
感染症に加えて、ロシアによるウクライナ侵攻によってウクライナでのフィールド調査がほぼ絶望的になった。2022年度の早期に戦争が終結すれば何らかの現地調査が可能かもしれないが、おそらくは無理であろう。またロシアでの調査も現在は渡航中止勧告が出ており、困難が予想される。 したがって研究方法を修正する必要がある。まず文献資料による調査は拡大する。次に、国内で入手可能な資料の入手に関しては、感染症の状況にもよるが、国内出張を増加することで対応したい。また、ウクライナの政治体制の今後を占うためにも、現在の戦争の原因や経緯を調査する必要が出てきた。この戦争に関する調査を行うので、必要な資料がウクライナ内政を中心したものから、安全保障や外交およびロシアやその他の旧ソ連諸国全般に関するもの、さらにはアメリカを中心とした西側諸国の外交・安全保障に関するものまで広がることになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型感染症の世界的な拡大により、計画していたフィールドワークが不可能になったことが理由で予定通りの執行ができなくなった。また、ロシアによるウクライナ侵攻によって、2022年度のフィールドワークも絶望的な状況である。研究方法を大きく見直し、各種文献資料による調査を行う必要がある。また戦争自体を調査する必要があるため、扱う資料の幅も外交・安全保障を含めて、広く購入することを予定している。
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