研究課題/領域番号 |
18K01452
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
星野 昌裕 南山大学, 総合政策学部, 教授 (00316150)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中国政治 / 民族問題 / 民族政策 |
研究実績の概要 |
本研究は、中国政治の変容過程を分析するには中国社会の多民族性を射程に入れる必要があるとの認識から、とくに中国の民族政策の枠組みがどのように変化しつつあるのか、その変容過程を明らかにすることを目的としている。 この研究を進めるには中国における少数民族地域でのフィールドワークが必要であり、2019年度は中国・寧夏回族自治区において、中国社会科学院の中国人研究者らとともに、少数民族政策の現状と課題に関する研究調査および資料収集を行った。具体的には、8月13日から18日まで銀川市、呉忠市、固原市などで研究調査及び資料収集を実施した。このフィールドワークでは、福建省が寧夏回族自治区に対して実施している経済支援の実情と現状を調査した。この支援の一例として、寧夏回族自治区・固原地域に居住する経済的に恵まれない回族を、銀川市に新たに作った村に移住させ、生活の向上を図ろうとするプロジェクトの実施が確認できた。また、このようなプロジェクトが寧夏回族自治区の各地で実施されていることを確認することもできた。 2019年度においては、民族政策転換論が登場するにいたった歴史的、政治的、社会的背景を継続的に分析しつつ、民族政策転換論の内容および言説に対する詳細な分析と体系化について研究を進めることとした。そこで得られた知見を研究論文にまとめ、英文ジャーナル(「Preferential policies for China’s ethnic minorities at a crossroads」)および学会誌(「第2期習近平政権の民族政策に係る中間評価と展望」)に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は4年間の研究計画のなかで、1)民族政策転換論が登場するにいたった歴史的、政治的、社会的背景の分析、2)民族政策転換論の内容および言説に対する詳細な分析と体系化、3)民族政策転換論の視角からみた中国の政治変容に関する分析、4)比較政治学的視点による他国他地域との相対的分析という4つの分析を行いつつ、少数民族地域でのフィールドワーク、インタビュー、資料収集を行うこととしている。このうち2019年度は、1)民族政策転換論が登場するにいたった歴史的、政治的、社会的背景の分析を継続するとともに、2)民族政策転換論の内容および言説に対する詳細な分析と体系化および少数民族地域でのフィールドワークを行った。「研究実績の概要」で述べたように、2019年度においては権威ある英文ジャーナルと学会誌に論文を発表したほか、中国・寧夏回族自治区でのフィールドワークを実施することができた。このことから今年度は、ほぼ予定通りに研究が進展していると評価することができると考える。 ただし、2020年2月から3月にかけて、新型コロナウイルスの感染拡大にともない、海外出張による専門家との意見交換や資料収集および研究者の招聘を実施できなくなり、これらの活動を次年度以降に延期せざるを得ない状況が発生した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度以降については、1)民族政策転換論が登場するにいたった歴史的、政治的、社会的背景の分析、2)民族政策転換論の内容および言説に対する詳細な分析と体系化、3)民族政策転換論の視角からみた中国の政治変容に関する分析、4)比較政治学的視点による他国他地域との相対的分析という4つの分析のうち、おもに3)以降の研究を順次進めていく予定である。また、治安や安全面などを考慮して適切な少数民族地域を選定し、フィールドワークを実施する予定としているが、新型コロナウイルス感染拡大の影響等を慎重に見きわめ、これにかわる計画として、世界各地での関連資料の収集を重点的に実施することなどを念頭に、柔軟性をもって研究を推進していくことを心がける。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)フィールドワークに必要となる自動車の借り上げ代金および必要な物品が想定より低価格だったこと、また2020年2月から3月に計画していた海外出張や研究者の招聘が新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて実施を見送らざるを得なかったことから、次年度使用額が生じた。 (次年度使用計画)次年度に実施するフィールドワークおよび必要物品の購入、海外出張、研究者の招聘等に使用する。
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