研究課題/領域番号 |
18K01463
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
上野 友也 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (10587421)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 安全保障化 / 国連安全保障理事会 / 文民 / 子ども / 女性 / 人権 |
研究実績の概要 |
本研究では、その理論的基盤を構成する安全保障化理論に関して研究を進めてきた。安全保障化理論は、ブザンなどのコペンハーゲン学派といわれる研究者によって構築されてきた議論であり、それまで安全保障の領域であると認識されてこなかった問題が、安全保障の問題として認識されるようになってきたことを明らかにする理論である。本研究では、コペンハーゲン学派の安全保障化理論について研究を進め、これに対する批判的研究も調査を進めている。コペンハーゲン学派の安全保障化理論に対して、ビゴ、バルザック、ユイスマンスといったパリ学派といわれる研究者が批判を加え、発話に基づく安全保障化理論に対抗して実践に基づく安全保障化理論の展開している。このような実践に基づく安全保障化理論における理論的基盤をなすのが、哲学者ブルデューやフーコーが提案した諸概念である。とくに、本研究では、フーコーの生政治、統治性の概念を用いて、コペンハーゲン学派の安全保障化理論の射程を拡張し、国連安全保障理事会がどのようにして安全保障化プロセスを進めているのかを明らかにする。 今後、本研究では、安全保障化理論の研究をさらに進め、国連安全保障理事会による人権保障ガバナンスがどのように構築されているのかを解明していく。国連安全保障理事会が、文民の保護、子どもの保護、女性・平和・安全保障といった一連の決議を出すだけでなく、それらの決議に基づく制度や運用を通じて、安全保障の領域を人間の生活や福祉にまで拡大していることを明らかにしたい。これを明らかにするためには、フーコーの生政治、統治性の議論は有効なものであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年4月から9月までは、安全保障化に関する理論研究を進める予定であったが、計画期間よりもずれこんでいる。本研究では、安全保障化理論に関する先行研究やそれらに対する批判を整理し、安全保障化理論を再構築することで、国連安全保障理事会による安全保障の拡張という動向をとらえることを目的としている。現段階では、これらの安全保障化理論に関する理論研究については、先行研究の調査がまだ不十分であり、さらなる先行研究の精査が必要な段階である。また、このような安全保障化理論が、国連安全保障理事会による安全保障化プロセスをどのように説明できるのかを、さらに研究する必要もあるだろう。2018年10月から2019年9月までは、国連安保理決議、議長声明、議事録、国連事務総長報告などの一次文献、二次文献を用いることで、人権保障ガバナンスがどのように構築されているのかを研究する予定であったが、先行研究の整理に時間をかけているために、これには着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
2018年9月までに、安全保障化理論に関する理論研究を終える予定であったが、まだ先行研究の調査が十分ではない。そのため、2019年6月までには先行研究の調査を終えて、文献調査とインタビュー調査を通じた国連安全保障理事会による人権保障ガバナンスの構築について研究を進めていきたい。これには、4つの研究段階がある。第一に、人権保障ガバナンスの組織化・制度化に関する段階。文民の保護、子どもの保護、女性・平和・安全保障に関する国連安全保障理事会決議や、それに基づく制度やその運用を研究する。第二に、人権保障ガバナンスと軍事的手段の関係についての段階。人権保障ガバナンスが、国連平和維持活動や多国籍軍の活動とどのような関係にあるのかを研究する。第三に、人権保障ガバナンスの調整・統合・衝突に関する段階。国連安全保障理事会による人権保障ガバナンスが、他の人道支援機関との関係がどのようなものであるのかを研究する。最後に、人権保障ガバナンスの成果と課題に関する段階である。これらは、2019年9月までに終了する予定であったが、先行研究の調査が遅れているために、この調査を2020年6月までに終えることを目標としたい。
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