研究課題/領域番号 |
18K01491
|
研究機関 | フェリス女学院大学 |
研究代表者 |
杉之原 真子 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 准教授 (80376631)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | グローバリゼーション / 海外直接投資 / FDI / 対内投資規制 / 規制 |
研究実績の概要 |
本研究は、先進諸国における海外直接投資(FDI)への規制の形成過程を検討することを通じ、1990年代以降著しく増大したFDIがもたらした国際政治経済の構造変化が、各国の対外経済政策に及ぼした影響を明らかにすることを目的とする。 2019年度は、日米の事例を中心に、対内直接投資の規制について政府や国際機関の資料、新聞報道などをもとに調査を進めた。米国での現地調査では、投資規制の形成過程に詳しい専門家にインタビューを行ったり、国立公文書館および議会図書館において文献調査を行ったりした。日本でも資料調査に加え、専門家へのインタビューを実施した。 これらの研究成果のうち米国にかかわる部分を、「『新冷戦』下の対内直接投資をめぐる選好の形成――米国の事例を中心に」という題で日本国際政治学会研究大会(2019年10月)で報告した。日本の事例については、台日技術協力研修(2019年8月)およびフィリピンのサント・トーマス大学でのセミナー(2020年2月)で報告した。さらに、日本政治学会研究大会(2019年10月)では「対内直接投資のポリティクス」という企画を提出して採択され、司会と討論者を務めた。 これらの研究においては、日米両国において、国際経済の構造変化、とりわけ中国の大国化が対内直接投資規制の必要性を高めたことと同時に、それぞれの国内政治要因が規制の内容に影響を及ぼしていることが明らかになった。米国においては、行政府・議会それぞれの内部において、中国からの投資を念頭に規制を強化することにはコンセンサスがあるものの、中国に対する見方は一枚岩ではなく規制強化の動機も多様であり、法案の内容にも影響を与えている。一方日本では、規制強化は行政主導で実施された。規制の内容には、安全保障面からの技術の保護に加えて、アクティビスト投資の増大に対する企業の懸念が反映された可能性も指摘できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、インターネットや図書館を用いた文献調査および米国での現地調査を順調に実施した。また、論文をもとにした学会発表や、投資分野を研究する研究者との交流を通じて、研究へのフィードバックも得られた。これらの成果を、今後まとめる論文に反映させたい。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究最終年度にあたる2020年度は、1、2年目の成果を踏まえ、対内直接投資規制の世界的傾向および日米の事例等に関し論文をまとめ、その成果を国内外で発信する計画である。 公開されているデータを用いた分析では、特に米国の事例に関し、データセットを作成し、対内直接投資規制への支持を規定する政治的・経済的な諸要因を計量分析を通じて考察する。日本およびアメリカについての質的調査もさらに進め、それぞれ論文にまとめて学会発表や雑誌への投稿を行う。 なお、2020年7月に報告を予定していた国際学会が新型コロナウイルス感染症の拡大でキャンセルされ、また2020年度中の現地調査や研究会の実施も困難になりつつある。このような状況を踏まえ、当初の計画を軌道修正し、論文の執筆を研究の中心とする可能性が高い。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に国際学会での報告が採択されたため、翌年度に旅費を残した。(ただし学会は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けてキャンセルされた。)
|