研究課題/領域番号 |
18K01491
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研究機関 | フェリス女学院大学 |
研究代表者 |
杉之原 真子 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 准教授 (80376631)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グローバル化 / 海外直接投資 / 対内直接投資 / 規制政策 / 経済と安全保障 / 米国 / 日本 |
研究実績の概要 |
1990年代以降、貿易だけでなく直接投資を通じて各国の経済的つながりがさらに深まるとともに、国際経済における新興国の台頭によって、国際政治経済の構造が変化した。それを最も反映した分野の1つが海外直接投資(FDI)である。企業の外国への進出が活発になり、経済成長に寄与する一方、特に異なる政治・経済体制を有する国からの経済主体が国内で経済活動をすることについて安全保障上の懸念も高まった。政策決定者は受け入れ促進と制限のバランスをとることが求められるようになったのである。 本研究では、米国と日本における、主に2000年代半ば以降の対内FDI投資規制を対象に、経済的利害と安全保障上の懸念の両面から、国内の政策決定過程において様々な集団がどのような選好を持ち、政策決定にどのように影響を及ぼしたかを検討してきた。経済面では、投資受け入れによる経済的利益への期待だけでなく、投資を制限し外国企業との競争を回避したい国内アクターも存在する。安全保障面では、対内直接投資の増大が、技術や情報の流出を招いて軍事上のリスクとなる可能性に加え、投資元の国の人権状況への懸念も政策決定に影響した。本研究では様々なアクターの選好を検証するとともに、日米両国の政治制度が各アクターの影響力にどのように作用したかも検討した。 2020年度には、これまでに実施した現地調査等の成果をもとに分析を深めた。その成果である論文は2020年中に学術誌に投稿され、査読中の状態にある。また、日本国際問題研究所の「経済・安全保障リンケージ」研究会(主査:飯田敬輔東京大学教授)に参加し、対内直接投資規制の動向について報告した。アメリカについては連邦議会での議員の動機を明らかにするためのデータベースの構築も行ったが、この分析結果は報告予定であった国際学会がコロナ禍により延期されたため、2021年7月に発表することとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度はコロナ禍により、研究計画の遂行にも影響が出た。米国の対内直接投資規制の決定要因をめぐる報告を、2020年7月の国際学会(International Political Science Association、リスボンにて開催予定)で行い、フィードバックを得て英文論文を国際誌に投稿する計画であったが、学会は1年間開催が延期された。同報告は、2021年7月に行うこととなっている。また、米国における現地調査も実施することができず、インターネット上で利用可能な資料を収集し、分析した。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果を報告することになっていた国際学会は2020年7月の予定が1年延期され、さらに2021年2月にはオンライン開催となることが決まった。2021年7月に当初の予定より1年遅れで報告を行い、そこで得たフィードバックを反映し、論文を完成する。さらに、日本の事例に関する論文も2021年度中に別途まとめる予定である。 米国での現地調査は2021年度も引き続き困難であるが、2019年度までの調査とその後のインターネット上の資料の収集によって相当の情報が得られたため、研究成果の取りまとめの大きな障害にはならないと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
発表を予定委していた国際学会がコロナ禍により延期されたため、旅費を次年度に繰り越した。2021年度に旅費として使用予定である。
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