研究実績の概要 |
企業の社会的責任において最も重要な要素のひとつは環境に関する企業の社会的責任(Environmental Corporate Social Responsibility, ECSR)である。日本企業だけでなく世界的にも多くの企業がECSRを推進し、高い目標を挙げている。更に、個別企業だけでなく業界団体が主導する環境問題への業界での自主的な取り組みへのコミットメントも広範に見られる。本研究プロジェクトでは、環境問題に取り組むことによって、資金調達コストが下がる、製品の需要が増える、政府の規制を回避するといった直接的な利潤改善効果がなくても、企業あるいは業界団体が自主的にECSRを採用することがあり得ること、業界団体が主導すると個別企業が行うよりも高い目標を挙げられるが、経済厚生の観点からは必ずしも望ましいものではないことを明らかにした。更に、経済厚生悪化効果は、温暖化ガス排出総量に対するコミットメントではなく、製品1単位当たりの排出量である排出原単位にコミットする方が出にくいことを明らかにした。この成果はSocial Science Citation Index(SSCI)所収の国際的な査読誌(以下SSCI誌)であるJournal of Institutional and Theoretical Economicsに掲載された。更にこの原単位規制の有効性を踏まえて、企業の自主的行動を促す政府の規制としてGreen Portfolio Standardsの有効性と限界を明らかにした成果をSSCI誌であるEconomics Lettersに公刊した。 一部の企業のみが社会厚生を考慮する混合寡占の研究も継続し、その社会厚生を考慮した行動が、他の企業の生産、参入、技術移転や、市場全体の競争構造に与える影響を分析した論文計4篇をそれぞれSSCI誌に発表した。
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