本年度の主な研究成果として2つ挙げられる。まず第1に、推移性を満たす指数として知られる4つの指数(Dutot・Jevons・Lowe・generalized Young)と、現在一般的に広く用いられている4つの指数(Laspeyres・Paasche・Fisher・Tornqvist)をアメリカの産業別生産性データベースに応用して、1947年~2014年にわたる、一国全体の生産物・投入物・生産性の上昇率を計算した。その結果、後者の4指数は、連鎖指数で考えた場合、極めて値が近しいにもかかわらず、前者の4指数はこれらから大きく異なっており、前者4指数による計測には、極めて大きい誤差が発生していると考えられることが明らかになった。 第2に、通常の価格の変化率を集計値である価格指数とは異なり、価格の差分の集計値である価格指標に注目し、新たな価格指標を提案し、それが経済学的に正当化できることを証明した。その過程で、それに対応する新たな数量指数に関しても経済学的に正当化できることを証明した。これまで、Bennet指標のみが経済学的に正当化できる指標として知られていたが、この指標を特定の財の価格を用いて規準化する必要があった。本研究で考案した価格指標・数量指標は、そのような基準化をしなくても、経済学的に正当化できる点に大きな特徴がある。また、この研究の過程で、ノンホモセティックな効用関数の下での支出関数に用いることができる、新たなフレキシブル関数型を考案した。
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