私企業の利潤最大化行動における生産補助金政策をはじめとした産業政策、公企業の目的最大化行動における部分民営化比率など、企業行動に影響し、その非対称性を生み出す要因の一つになる。この点に着目して、2023年度においては、それらの影響要因が企業の自由参入行動とどのような関係性を持つか検討した。特に、私企業が自由参入をする混合寡占市場において、部分民営化比率が均衡の総生産量に影響しないという、混合寡占理論ではよく知られた不変性の本質はどこにあるのかという視点から、より一般的な文脈への拡張を試みた。まず、混合寡占における不変性は、自由参入均衡における私企業行動を規定するクールノーカーブと平均費用曲線のどちらも部分民営化比率から独立であることに帰着することを確認した。これを踏まえて、総生産量に限らない、各企業の戦略の関数の不変性について検討した。現段階では、(1) 自由参入する主体とは別の主体が存在すること、(2) 不変性を与えるパラメータが自由参入する主体の1階条件に影響しないこと、これらの2つの条件が満たされるとき、そのパラメータが総生産量や各企業の戦略のある種の関数を不変に保つことが示された。ただし、この結果は次の点から不完全だといえる。1つに、上の条件は不変性を保証する十分条件にすぎないということである。今後、必要条件が導かれうるか検討したり、分類学的に別の様々な十分条件を求める必要性がある。2つ目に、上記の条件はあくまで一般的な関数の条件にすぎず、経済学的な直観を与えるものではないということである。上述した混合寡占理論における不変性と同じく、経済学的な意味合いを打ち出す必要があるといえる。これらが今後の課題として残っている。
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