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2020 年度 実施状況報告書

主観的幸福感を用いた所得再配分政策の評価

研究課題

研究課題/領域番号 18K01673
研究機関京都文教大学

研究代表者

筒井 義郎  京都文教大学, 総合社会学部, 教授 (50163845)

研究分担者 山根 承子  大阪大学, 経済学研究科, 招へい研究員 (40633798)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード固定効果モデル / 個人間比較 / ハイ・ブリッド・モデル / 不平等回避 / 所得再分配
研究実績の概要

本年度は主に、3つの研究を行った。第1に、幸福度を用いた不平等度回避の推定方法について検討を進めた。この研究では主としてランダム効果モデルに基づいた結果を報告していたが、いろいろな研究者から固定効果モデルの推定が重要であるとの指摘を受けた。しかし、固定効果モデルの推定結果は満足なものでなかったので、そもそも、パネルデータが利用可能な時に、どのような推定方法が適切であるかについて検討した。
その結果、以下のような結論に達した。固定効果モデルは個人内の変化に基づく法則を推定するものであるが、これに対し、個人間の法則を推定するbetween推定がある。ランダム効果モデルはその中間に位置し、われわれの場合は、between推定はランダム効果モデルと似た結果である。どちらの結果を重視すべきについて、最近の経済学においては、政策介入が重要な課題であると考え、因果関係を調べることに役立つ固定効果モデルの結果が重要と考えることが多い。しかし、他の学問領域では必ずしもそうでなく、固定効果モデルとbetween推定の両方を一つの推定式で推定する「ハイブリッド・モデル」という推定も行われることが分かった。
もちろん因果関係の同定は重要であるが、学問全体ではいろいろな接近法があり、因果関係を同定できない研究は無意味であると考えるのは行き過ぎであろう。われわれの研究の目的は人々の幸福度の合計を大きくする所得再分配を探すことであるので、between推定(個人間比較)の結果を用いるほうが適切であるとも考えられる。こうした検討を踏まえ、本研究課題では、固定効果モデルではなく、個人間比較の法則として、幸福度を用いた不平等度回避の推定結果を解釈することに決定した。
第2に、前年度に引き続き、社会の幸福について、歴史学・人類史がどのような知見を得ているかを確認した。第3に、出生体重の論文を英文で完成した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

上記のように、本研究の基本的な推定法の選択につき疑問に突き当たり、本年度は、この問題の解決に当たった。その結論として、between 推定の結果を用いるというアプローチは経済学では珍しく、多くの研究者から賛同を得られるかどうかは未知数である。しかし、予想外にこの問題に突き当たったことは重要な事件であり、パネルデータを用いた法則の解明として、個人の時間的変化に関する法則に加えて、個人間の相違に関する法則という問題も存在するというアイディアにたどり着いたことは、重要な進展であった。少なくとも、自分自身の理解は深まったと評価できる。したがって、この年度内に、人々の幸福度の合計を大きくする所得再分配を計算することはできなかったが、個人間比較の法則の計測法や意味についての理解が進んだことは非常に大きな成果であると評価できる。
さらに、社会において幸福追求目的をどのように位置づけるべきか、という問題についての文献渉猟が進み、出生体重の研究が完成したということから、おおむね、予定通り進んでいると評価する。

今後の研究の推進方策

今年度得られた、個人間比較の推定値(between 推定)に基づいて、今後は、人々の幸福度の合計を大きくする所得再分配を計算する。

次年度使用額が生じた理由

本年度はアンケート調査を実施する予定であったが、新型コロナ感染によって幸福度が大きな影響を受けて変化していることが予想されるので、来年度に持ち越した。来年度は、いろいろな状況を勘案しつつ、アンケート調査を実施する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 地域公益とは何か?2021

    • 著者名/発表者名
      筒井義郎
    • 雑誌名

      金融経済研究

      巻: 43 ページ: 106-112

  • [雑誌論文] Is Homo Economicus An Ideal to be Pursued? Using US and Japan Survey Data2020

    • 著者名/発表者名
      Yamane Shoko、Yoneda Hiroyasu、Tsutsui Yoshiro
    • 雑誌名

      Asian Economic Journal

      巻: 34 ページ: 357~378

    • DOI

      10.1111/asej.12222

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Racers’ attractive looks, popularity, and performance: How do speedboat racers react to fans’ expectations?2020

    • 著者名/発表者名
      Eiji Yamamura, Ryohei Hayashi, Yoshiro Tsutsui, and Fumio Ohtake
    • 雑誌名

      Japanese Economic Review

      巻: na ページ: na

    • 査読あり
  • [学会発表] Is Homo economicus an ideal to be pursued?2020

    • 著者名/発表者名
      筒井義郎
    • 学会等名
      MEW (Monetary Economic Workshop)

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公開日: 2021-12-27  

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